高畑勲展

高畑勲監督の功績をふり返る展覧会「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」が、東京国立近代美術館で7月2日に開幕しました。
開幕の翌日となる3日に、早速観に行ってきました。ほんとうはもう少し時間を置いて、初期の高畑作品をお浚いしたうえで行こうと考えていたんですけど、始まってしまったら我慢ができませんでした。



見どころ満載の展示とはまさにこのことで、文字情報にイラストに映像と、圧倒される情報量でした。一回ですべて把握しようとしても、脳がオーバーヒートしてしまうので困難というものです。

高畑さんが演出助手時代に書いたメモや、構想案など、とにかくテキストが沢山あるので、ある程度絞って読んでいかないと、時間はいくらでも消費してしまいます。それこそ、開館から閉館までいれるんじゃないでしょうか。体力がもたないですけど(笑)。


こちらの動画ではグッズを紹介しています。

「高畑勲展」の構成

「高畑勲展」の構成は、ザックリ分けると以下の4章と19のエリアで展示されています。

第1章「出発点 アニメーション映画への情熱」
01.高畑勲年表
02.起点としての『やぶにらみの暴君』
03.『ぼくらのかぐや姫』構想メモ、『安寿と厨子王丸』
04.『狼少年ケン』、『わんぱく王子の大蛇退治』
05.『太陽の王子ホルスの大冒険』
06.奈良美智《島への挨拶》

第2章「日常のよろこび アニメーションの新たな表現領域を開拓」
07.『長くつ下のピッピ』『パンダコパンダ』
08.『アルプスの少女ハイジ』
09.『母をたずねて三千里』
10.『赤毛のアン』

第3章「日本文化への眼差し 過去と現在の対話」
11.『じゃりン子チエ』
12.『セロ弾きのゴーシュ』
13.『柳川堀割物語』
14.『火垂るの墓』
15.『おもひでぽろぽろ』
16.『平成狸合戦ぽんぽこ』
17.フレデリック・バックとの交流

第4章「スケッチの躍動 新たなアニメーションへの挑戦」
18.『ホーホケキョ となりの山田くん』
19.『かぐや姫の物語』

『ぼくらのかぐや姫』から『かぐや姫の物語』まで

高畑勲監督が東映動画に入社して間もない、新人のころに構想を練った『ぼくらのかぐや姫』から始まって、スタジオジブリの『かぐや姫の物語』で終るという流れになっています。

となりの山田くん

高畑監督のキャリアを考えたときに、『となりの山田くん』で終わる可能性も充分あったと思うんですけど、『かぐや姫の物語』を作ってくれて本当に良かったと思いました。
展示の構成がそうなっているってこともあるんですけど、高畑さんは『かぐや姫』を映画化するために演出家になったのかなって思ってしまうほど、高畑さんの求めているものに辿り着いた感じがありました。

この展示を見ながら、高畑作品を望んだ氏家さんや作ることを決めた鈴木さん、実際に作ってくれた高畑監督や西村プロデューサー、スタッフの皆さんに感謝の気持ちが湧いてくるというものです。

最低3時間は必要

文字情報が圧倒的に多いのは1章までで、2章からは徐々に減っていきます。ジブリ作品のエリアに入ると、テキストはほとんどなかったと思います。後半ほど絵が多くなって進みやすくなるので、最初にかるく1巡してみて、自分の琴線に触れるものがどこにあるか把握しておくと、鑑賞ペースが作りやすいかもしれません。
自分は『太陽の王子ホルスの大冒険』まで観たところで1時間くらい経ってしまって、時間が足りなくなるかと焦りました。

美術館での時間の使い方は、ほんとうに人によって違いますけども、3時間くらいとっておくと満足できる人は多いと思います。あくまで空いている状態ですので、混雑具合によっては違いがあると思います。

気になった展示

とにかく展示物が多くて、気になったものはいろいろあるのですが、真っ先に思い浮かぶのは『太陽の王子ホルスの大冒険』エリアですね。ここは、かなり熱いものがあります。

大塚康生さんが描いたキャラクター比較表たるものがありまして、映画のキャラが東映動画の面々に寄せて描かれています。それを見ると、その人たちの関係性みたいなのが匂ってくるのがたまりません。

それから、まだ当時は駆け出しのアニメーターだった宮崎駿さんが書いた、『ホルス』の提案書というものがあります。文章量が多いので、すべて読むのは困難だと思いますけど、これは面白かったです。なんと、宮崎さんは、ホルスの名前を「パズー」、ヒルダの名前を「シータ」にしてみてはどうかと提案していました(笑)。もし、ここでその名前が採用されていたら、『天空の城ラピュタ』ではどんな名前を付けていたんでしょうね。

太陽の王子ホルスの大冒険

宮崎駿監督が以前「高畑勲 お別れの会」で、『ホルス』制作時の話をしていたことがあって、会社側とあるシーンをめぐって「削れ」「削れない」とやりあったと言ってましたが、それが文書で残っていました。制作側が高畑監督と作画監督の大塚康生さん宛てに送った質問書に、2人が返事をするというもの。こんな資料の現物が見れるなんて思いもしませんでした。一生に一度の貴重な機会ですね。これには、ものづくりにかける想いというか、当時の息吹みたいなものが感じられて感涙ものでした。

あと、展覧会の開幕直前に『安寿と厨子王丸』の絵コンテなどの資料が発見されていましたけど、絵コンテの実物は展示されていませんでした。状態が悪くて表には出せなかったんでしょうか。コピーされたものがパネルになっています。

そうそう、『平成狸合戦ぽんぽこ』のイメージボードも良かったです。『ぽんぽこ』のアートブックは、何故か新書サイズの小さいものなので、大きいサイズで観たことがなかったんですよね。

フォトスポット『アルプスの少女ハイジ』

アルプスの少女ハイジ ジオラマ

フォトエリアが設けられていまして、『アルプスの少女ハイジ』のジオラマが置かれています。

アルプスの少女ハイジ ジオラマ

アルプスの少女ハイジ ジオラマ

アルプスの少女ハイジ ジオラマ

アルプスの少女ハイジ ジオラマ

このジオラマは、ジブリ美術館で2005年に開催された「アルプスの少女ハイジ展 ~その作り手たちの仕事~」という企画展のときに作られたものですね。2014年に江戸東京たてもの園で開幕した「ジブリの立体建造物展」でも展示されていました。今回が3回目の展示と思われます。でも、写真撮影ができるのは今回が初かもしれません。

アルプスの少女ハイジ ジオラマ

さらに外でも写真が撮れるようになっていて、出口のすぐそばに『ハイジ』のセットがあって、大きなヨーゼフがいます。こちらのヨーゼフも若干くたびれているので、どこかで展示されていたものと思われます。

音声ガイドがオススメ

高畑勲展 音声ガイド

それから、音声ガイドは550円ですが利用したほうが良いと思います。高畑勲作品に携わった、大塚康生さん、小田部羊一さん、永友和秀さん、男鹿和雄さん、山本二三さんといった、そうそうたる6名のインタビューが収められています。ガイドを聴きながらの鑑賞も、展示の世界に没入できる感じがして心地良かったです。
ナレーターを務めたのは、『なつぞら』で坂場一久を演じている中川大志さんです。

めずらしいグッズがたくさん

高畑勲展 グッズ
グッズコーナーは、初期の高畑作品のグッズが並んでいるので、珍しいものばかりあります。
『安寿と厨子王丸』のグッズまで売っていたのは驚きました。それぞれの作品が、手ぬぐいやブローチ、ノート、しおり、紅茶、ネックレス、豆皿などなど、シリーズとして販売されています。

高畑勲展 グッズ

『安寿と厨子王丸』のネックレスを買おうか、1分くらい考えましたけど、着けないのでやめました(笑)。

ちなみに、ジブリ美術館やどんぐり共和国のアイテムも少し販売されていました。でも、ここでは「高畑勲展」限定グッズを買うのが吉ではないでしょうか。

戦利品

高畑勲展 グッズ

というわけで、私が買って来たグッズをご紹介します。
正直、グッズコーナーには散財する覚悟で臨んだんですけど、そんなに沢山は買いませんでした。

図録

高畑勲展 グッズ

まずはこれ。絶対買わなきゃいけない「図録」です。

ジブリ関連の展覧会に行ったら買わないわけにはいきません。
もの凄いボリュームなので買って損はありません。得しかないです。皆さん買いましょう。

ブックカバー

高畑勲展 ブックカバー

『平成狸合戦ぽんぽこ』のものを購入しました。
文庫本サイズのブックカバーですけど、カバーとして使うわけではなくて、絵が気に入ったので額装しようと思っています。

ボールペン

高畑勲展 ボールペン

ボールペンは『太陽の王子ホルスの大冒険』のやつで、ヒルダが描かれています。
ゼブラのサラサクリップの0.5でございます。
なんだかんだ言って、日常的に一番使うペンはボールペンですからね。

ノート

高畑勲展 ノート

そしてノートも『ホルスの大冒険』で、奥山玲子さんが描いたヒルダが表紙となっています。
写真ではわからないですけど、表紙は半透明になっていてオシャレなんですよ。

高畑勲展 栞

栞は『安寿と厨子王丸』の安寿です。
何か『安寿』グッズが欲しかったので買っておきました。

ポストカード

高畑勲展 ポストカード

ポストカードは『アルプスの少女ハイジ』の絵コンテとなっています。

以上が、「高畑勲展」で購入したグッズでした。
販売されているアイテムはバラエティに富んでいるので、きっと皆さんの琴線に触れるものもあるはずです。

貴重な資料とレアなグッズが揃っている、一生に一度のこの機会をお見逃しなく!

高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの
Takahata Isao: A Legend in Japanese Animation

期間:2019年7月2日(火)~10月6日(日)
時間:10:00~17:00(金・土は21:00まで)※入館は閉館30分前まで
会場:東京国立近代美術館
休館:月曜日、7月16日(火)、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)
※7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館
料金:一般1,500円、大学生1,100円、高校生600円