毎年恒例となっている、シアタス調布のジブリ作品上映会に行ってきました。
「映画のまち調布 シネマフェスティバル2023」の一環として、今年上映されたのは近藤喜文監督作品の『耳をすませば』です。
2019年の『風の谷のナウシカ』から始まり、2020年は『天空の城ラピュタ』、2021年は『となりのトトロ』、2022年は『魔女の宅急便』と、毎年ジブリ作品が上映されていました。
今年は、きっと『紅の豚』に違いない、とタカを括っていたら、なんと『耳をすませば』&『On Your Mark』の同時上映でした。
『紅の豚』ではなかったことにも驚きましたが、もっと驚いたのは『On Your Mark』が同時上映されたことです。
この作品は、宮崎駿監督が制作したCHAGE and ASKAのミュージックビデオで、1995年に『耳をすませば』が劇場公開されたときに併映されたものです。
当時は、『On Your Mark』の存在はほとんど告知されておらず、多くのジブリファンが何も知らずに、このMVを目の当たりにしました。
このとき、ほとんどのジブリファンは、『耳をすませば』を観に行ったら、突然「ジブリ実験劇場」の画面が現れ、宮崎駿監督のSF作品が始まるという衝撃を体験したのです。今回は、その当時を再現するために、同時上映されました。
以前より、いつか同時上映してほしいと願っていましたが、まさか本当にやってもらえるとは。感謝です。
今後、『On Your Mark』を劇場鑑賞できるチャンスがあるかどうか。まさに、「一生に一度は、映画館でジブリを」です。
劇場で観て思うのは、やはり画面が大きいので、小さな動きもわかりやすいということ。28年前の作品ですけど、作画の素晴らしさに感服します。このころのタッチは、けっこう力強さを感じますね。作画監督を務めた、安藤雅司さんの力も大きいのかもしれません。
それから、テレビとは音響が全然違うので、全身で『On Your Mark』を感じることができます。当時まったく何も知らずに観ていたのと、現在いろいろな設定を知ったうえで鑑賞するのでは、作品から受ける印象がまた違いますね。宮崎駿監督のエッセンスが凝縮されているのと、やはり押井守監督への対抗心も強く感じたかなぁ。
そして、間髪入れずに始まる『耳をすませば』。『On Your Mark』が終わったと思ったら、今度はトトロのマークが現れて、オリビア・ニュートン・ジョンの『カントリーロード』が流れます。そうそう、当時はこの流れついていけなかった人も多かったはず。
『On Your Mark』に心奪われて、「え、今の作品なに? え、あれ、『耳をすませば』始まった! ちょっと待って!」という、ジェットコースターに乗せられたような心境だった人もいたんじゃないでしょうか。
改めて、『耳をすませば』を劇場鑑賞してみると、オープニングの多摩の夜景がとても綺麗。何度も何度も観たはずなのに、「あぁ、こんなに綺麗だったのか」とうっとりしてしまいます。そして、『カントリーロード』がとても合う。初鑑賞した子供のころを思い出しましたね。雫が、親に反発していたり、背伸びして作家を目指す姿とか、この年頃ってこうだよね、と共感できるものがありましたね。
それから、井上直久さんが背景を手がけたイバラードの美術は、ほんとうに綺麗。空気がまったく違うような、上昇気流の素晴らしさといったら、これは劇場で観ないと、なかなか伝わらないですね。この背景画で長編を作ってもらいたいなと思いました。
音響に関しては、雫が聖司のアトリエで歌うシーンが、やはりテレビで観るのとはだいぶ違う。それぞれの楽器の音がよく聴こえますし、綿密な作画もあって、リアリティある名シーンだなと改めて思いました。
映画『耳をすませば』は1994年の設定で、当時の雫は14歳。2023年現在で考えると、43歳になっています。あのときの雫の母親と同じ年齢です。現在の雫は、同じように子供のことをみているんでしょうね。こうやってぐるぐると続くのだなと、ある種の感慨がありました。