ジブリ美術館 次回の企画展示は『幽霊塔』

カリオストロの城宮崎駿監督が、16日に放送されたTBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」内でインタビューに応じました。その中で、国際情勢や、長編アニメーションから引退した真意などの話に加えて、現在行っているジブリ美術館での展示の話が出ました。次回の企画展示は、江戸川乱歩の『幽霊塔』になるようです。



どのような展示になるか、詳細は明かされていませんが、幽霊塔そのものを美術館内部に建てるようです。中央ホールにある螺旋階段を、幽霊塔で被うという計画が明かされています。
また、『幽霊塔』は、宮崎監督が子どものときから好きな作品で、『ルパン三世 カリオストロの城』に大きな影響を与えたことを語っています。あの時計台と、城の内部構造ですね。
また、美術館用の短編作品については、作る可能性があるとの発言も出ています。

幽霊塔を美術館の中に建てちゃう、バカげた企画をやってます

――ぼくはファンなので、最近どうされてるのか、伺いたいのですが。

宮崎:
週休二日になってます。

――五日間働いてらっしゃるんですか?

宮崎:
ええ、ここに来てますけどね。ここで働いてるのかと言われると、働こうと努力はしてるんですけど。薪を割ったり、隣の保育園に行って邪魔してきたりだとか。でも、美術館の仕事をやってますから。これが難題でして。今さっきも、美術はここで大騒ぎしてたんです。

――美術館の仕事は、どんな感じの仕事をされてるんですか?

宮崎:
企画展示ってコーナーがあるんですよ。それを何で埋めるかっていうのは、思いついてしまうもんですから。それを提案すると、結局思い通りにはならなくなって。今やってるのは、江戸川乱歩の『幽霊塔』って小説なんです。これ、ぼくは子供のときに貸本屋で借りて、もの凄く面白かったんですよ。それで好きになって、歯車の絵を描くとか、そういうことに繋がっていった本なんですけど。挿絵を見てびっくりしましたけどね。こんな酷いもんだったのかと思って。昭和12年かなんかの本です。それを復刻したもんですね。
『ルパン三世 カリオストロの城』っていうのを、ずいぶん前に作ったんですけど、それの源流は『幽霊塔』なんですよ。そのままではやってませんけど。

――『カリオストロの城』は拝見しましたけど、どこに『幽霊塔』の影響があったんですか?

宮崎:
時計塔であること。それから、片っぽにローマの水路で繋がって、お城があるんですけど、それがひとつの建物にくっ付いてるのが幽霊塔の建物の構造です。いちばん下に地下の迷宮があって、それで天辺に時計がある。映画では、そのままやってませんけども。ひとつの建物を舞台にして作られてる作品っていうのは、実は日本にないんですよね。原作があったから、江戸川乱歩も黒岩涙香も書けたんでしょうけども。それは、イギリスの古い館を舞台にした、小説があったからなんですよ。
日本のお城ってね、妖怪が住み着くには良いですけど、構造的には使いようがないんですよね。日本の建築物っていうのは、壁の中が二重になってるとかいったところで。金沢のほうに忍者寺ってのがありますけど、あんなもの掛矢一本持ってくれば、全部ぶっ壊せるでしょ。だから、ダメなんですよ、あれ。壁が、クルッとひっくり返るとかね、掛け軸のとこに穴が空いてるとかね。鈴木さんは、そういうの好きかもしれませんけど(笑)。構造的じゃないんです。ヨーロッパ行くと、石の壁のもの凄い厚さとか、ほんとうにここに抜け穴があって、ポポロ広場まで通じてるんだとか言われたりね、そういうものを持ってるのは、やっぱり石の文化のとこですよね。そういうものに対する、憧れがあったものですから。『幽霊塔』に、その片鱗があったんです。

――『幽霊塔』を美術館で、絵で再現するんですか?

宮崎:
いやいや、幽霊塔を建てちゃおうってバカげた話で(笑)。

――どこにですか?

宮崎:
美術館の中に。

――ハハハ。

宮崎:
こういう螺旋階段があるんですよね。鳥籠みたいになってるんですけど。実際、小さい子が登ると、途中で分からなくなって、立ち止まったりするんですけど。それを、すっぽり塔で被うっていうね。どうなるんでしょうね。空気抜けの穴は、いっぱいつけようって言ってるんですけど。それを作って、迷路を作ろうとか。そうやって迷路にも入らないし、螺旋階段も登らない人のために、一応もっともらしい展示をやらなければいけないという(笑)。

――大変ですね(笑)。

宮崎:
それは、大人が読むだけで、子供は読みません。

――だけど、子供はそういうものがあるだけで面白いですよね。

宮崎:
ええ、そうです、子供たちはね。3%の原則って言ってるんですけど、100人のうち3人が気に入ったものがあればいい。トイレが良かったとかね、このハンドルが良かったとか、ほんとうにささやかなもので良いんですよ。その出し物だけで、お客さんの気持ちを集めようとか、そういう野心は持たない。

――どこかに子供が、キラっとくるものがあれば喜ぶわけですね。

宮崎:
そうなんです。「クルミわり人形」っていうのを、今やってますけど。「クルミわり人形」のときも大騒ぎしたんですけど、こんな大きなケーキを作ったんですよね。触れるやつを。小さい子は、まっすぐそこに行って、触ったり、こっそり舐めたりね。舐めても味しないですけど。それで満足して帰るんですよ。だから、大人のための展示と、子供のための展示は違うんです。両方またがる人もいるけど。そういうことで考えると、『幽霊塔』も怖いぞぉっていうのと、それから『幽霊塔』がどういう形で、江戸川乱歩まで繋がってきたか。実は、元々のいちばんの大元は、イギリスのミステリーの祖って言われてる、ウィルキー・コリンズって人の『白衣の女』っていうのがあるんですよ。そこまで、さかのぼるんです。でも、ほんとうに調べたら、もっとさかのぼるのかもしれないです。誰か論文を書かないかって話になってきて、困ってるんです(笑)。

――宮崎さんが書かれるしか(笑)。

宮崎:
ぼくはもう、そんなもん書く気しないんで。だから、忙しいんですよ(笑)。

――それに週五日、勤務しているわけですね?

宮崎:
大半は、困って寝てますけどね(笑)。

――これも陳腐な質問ですけど、引退されてアニメはもうやらないという気分ですか?

宮崎:
いや、短いものは美術館の仕事がありますから。それで作る可能性があると思ってます。ただ、いいときに辞めるって言ったんですよね。フィルムが無くなった、それからアニメーションにコンピュータが入り込みすぎて、スタッフも脳みそがコンピュータ化してるっていう、そういうときに生き合わせて、「もういいよ」って感じが、ぼくの中にありますから。だから、これで無理して手書きの現場を作る必要があるだろうかっていうのと、無理してCGでセル画風に画面を作るとかね、そういう意味があるだろうかって言ったら、無いですよ。もう、隠居していい歳だから。だから、それはやらない。それはそれで、良いんじゃないかと思ってますよ、ぼくは。

――長編アニメを作る想いと、美術館の『幽霊塔』をやるので、情熱のボリュームは変わらないんですか?

宮崎:
情熱のボリュームは、変わらないです。手間は、アニメーションはもう……。やりたくないこと、いっぱいやんなきゃいけないです。

――細かいことを、こう……。

宮崎:
細かいことだけじゃなくて、この絵でも……、「なんだこりゃ?」って思う絵がありますけど、名誉のために名前は言いませんけど。ほんとうに些細なことでも、アニメーションでやった場合に、「これじゃダメだ」っていうのが出てくるんですよ。
これ、ちょっと、今お見せしますね。この男がロウソク持ってるでしょう? あのね、ロウソクこうやって持たないですよ。蝋っていうのは、垂れてくるものですから。こうやって持ちます。こうやって描くってことは、この人はロウソクを持つってことを、官能的に理解してない証拠なんです。こうやってロウソク持って火をつけて歩いたら、垂れた蝋が全部手にかかるじゃないですか。最小限にするために、こうやって持ちますよね。それは、ダメでしょう。そういうことを直さなきゃいけないんですよ、アニメーションは。それから、大抵のやつは、こうやって持ちます。

――ぼくは、そうやってロウソク持ってるんだなとしか(笑)。

宮崎:
それはですね、映画の効果としては、ほんとに0.1ミリくらいの差なんです。それをぬかりなくやらないと、映画のリアリティっていうのは、最後に1ミリくらい違ってくるんですよ。せいぜい、1ミリくらいです。そういうもんだと思うんですけどね。それは、ほんとうに長編のときは、しんどいですね。

――そういう染みついたものがあるから、ロウソクの持ち方が気になっちゃうわけですね。

宮崎:
気にならないです。こいつ下手だな、と思うだけで。基本的に、ものを観察していない証拠なんです。絵の訓練はしたかもしれない、人の絵を真似してね。だけど、人間を観察してないですよ。これは、もうね、人間を観察しているかどうかっていうのは、瞬時に伝わってきますから。型で絵を描いたらダメなんです。アニメーションは特にそうです。いやもう、気の毒な絵描きさんですけど、この例に引っ張り出されて。

幽霊塔
因果な来歴から幽霊塔と呼ばれるその塔で、北川光雄は宿命的な出逢いをする。鄙にはまれな麗人、野末秋子の凄絶とさえ映る美相に心は乱れて、文目も分かぬ恋路の闇を惑い歩く。全編を彩る計り知れない謎、金銀財宝を秘めた西洋館を舞台に展開する波瀾万丈の翻案大ロマン。

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1 Comment

  1. 天沢ともか

    2017年5月23日 at 7:01 AM

    もう1度、愛知に来てください❤

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