紅の豚

『紅の豚』はジブリ作品としては珍しく、女性が主力スタッフとなって作られた作品です。
作画監督や美術監督といったセクションごとの責任者に、『紅の豚』では女性が置かれました。
これまでのジブリ作品ではなかったことで、初の試みとなります。



なぜ、『紅の豚』という作品で、女性ベースで作られることになったのでしょうか。

2年間という長期にわたる『おもひでぽろぽろ』の制作で、本作で作画監督を務めた近藤喜文さんと、美術監督の男鹿和雄さんは疲弊していました。
質の高いジブリ作品を維持するため、この二人に連投してもらいたいところですが、スタジオをうまく運営していくためには、そうもいきません。

紅の豚

そこで宮崎駿監督が思いついたのが、スタッフをすべて一新して、重要なポストを女性に任せるということ。宮崎監督は「女性が強いほうが落ちつく」と語っており、フェミニストの一面を持っていたことと、最初に勤めた東映動画では女性がたくさん活躍していた会社だったこともあり、その経験が活かされたようです。

こうして、作画監督には賀川愛さん、美術監督に久村佳津さんが選ばれました。さらに、録音演出にも、浅梨なおこさんという女性が抜擢されました。
アニメーション作品を作るうえで、監督を支える重要なポストが女性で固められました。これは、当時のアニメーション業界では画期的なことです。

紅の豚

『紅の豚』の映画の中で、ポルコの愛機・サボイアを直すピッコロ社の作業員はフィオをはじめとして、すべて女性でしたが、あれはスタジオジブリの投影として描かれたものだったのです。

なお、重要ポストで活躍した女性陣は、以下の方々です。

作画監督:賀川愛
美術監督:久村佳津
動画チェック:舘野仁美、中込利恵、藤村理枝
色彩チーフ:保田道世
色彩設計:立山照代、木村郁代
録音演出:浅梨なおこ