『ハウルの動く城』と『ゲド戦記』がブルーレイディスクで発売されるのを記念したトークイベントが15日、東京・恵比寿ガーデンルームで開かれました。
これまでジブリ作品を特集してきた映画雑誌『CUT』と、絵本雑誌『MOE』の編集長らが登壇し、ジブリ作品を語るというマニアックなイベントです。
『CUT』編集長の話が面白かったで、一部を書き起こしてみました。
ハウルについて
『ハウル』は当時、問題作とされていて、賛否両論のあった作品だと思うんですね。
「意味が分からない」という意見が多かったのを記憶しています。
ソフィーが若くなったり老人になったり、まったく説明なく進んでいく破天荒な映画だったという印象が強かったんですね。
そのあとに、『崖の上のポニョ』という、また破天荒な、宮崎監督自身が「前衛映画だ」と言う作品を出して。
そういうことを全部ひっくるめて、すべて分かったうえで、映画というフォーマットを覆して『ハウル』を観てみると、面白い作品だと思います。
ゲドについて
『ゲド戦記』については、日本では宮崎駿さんの息子さんが監督したことで、今までの宮崎駿作品と比較されましたけど、海外では違うんですね。やっぱり原作の『ゲド戦記』が有名で、熱いファンが多い。
かわいそうなことに、その当時『ロード・オブ・ザ・リング』の記憶が新しかったんですよ。
あれは原作に忠実で、非常に上手く映画化に成功した作品で、誰もあれを非難する人はいなかった。
その記憶が新しいなかに、『ゲド戦記』が出てきました。「原作と全然違うじゃないか」っていう話になって。そこで厳しい批評を見ましたね。
脱ファンタジー
宮崎駿さんのインタビューで、「ファンタジーは全部ウソだ」というのを出しているんですね。たぶんなんですけど、宮崎駿さんは、今の若い人たちに絶望しているんだろう、と思うんです。うちの渋谷と、宮崎駿さんの対談はいつも、お爺ちゃんの愚痴みたいになって(笑)。
Cutを読んだ方は分かると思うんですけど、若い世代がもっと頑張れよ、みたいなところがあると思うんですけど。
脱ファンタジー宣言というのは、宮崎駿さん世代だと「ファンタジー」というのは、ほんとうに「ファンタジー」なんですよ。
ぼくらの世代だと、ゲームだなんだとファンタジーに囲まれてしまって、逆にリアルを知らない世代なんだろうと。いちばん思ったのは、9.11のときに、あれが「あ、ハリウッド映画みたい」って、全員そう書いちゃったっていうのが、ぼくの世代とか若い子たちで。あれほどリアルなのに、ファンタジーにしか見えないと。
やっぱり、リアリティを知らないとファンタジーを描けないと思うんですよね。ファンタジーの上でファンタジーを語っても、まったく説得力のないことだと、宮崎監督は感じとっているんだと思います。
それ故に、若者批判や脱物語に繋がってくるのだと思います。