押井守ブロマガ開始記念! 世界の半分を怒らせる生放送

2012年にニコ生で放送された「押井守ブロマガ開始記念! 世界の半分を怒らせる生放送」の鈴木敏夫プロデューサー×押井守監督×川上量生さんの対談を文字に起しました。
ニコ生の視聴者から、「いちばん好きなジブリ作品は?」という質問が寄せられ、押井守監督と川上さんが『ハウルの動く城』について語っています。



『ハウルの動く城』は男の内面の話

押井:
『ラピュタ』かな。あれがいちばん好き。……あ、そうじゃないな。ちょっと違うな。

鈴木:
なに(笑)。

押井:
あ、わかった、『ハウル』だ。

鈴木:
『ハウル』好きなんだ?

押井:
『ハウル』大好き。自分で買ったの『ハウル』だけだもん。あれスーパーマーケットで買ったんだけどさ。あとは、だって買ったことないもん。この人くれないからさ、絶対。

鈴木:
そんなことないよ。違うよ。

押井:
最近送ってくるようになったけど、昔はくれなかった。

鈴木:
だって、どこにいるか分かんないんだもん。

押井:
よく言うよ。よく会ってたじゃん(笑)。
『ハウル』が、なぜ良いかっていうと。あれ、けっこう評判悪かったじゃない。

鈴木:
まあね。

押井:
けっこうメチャクチャな映画なんだけどさ、構成は破綻しまくってるし。でも、宮さん、初めて良いこと言ったと思ったわけ。あの「カチャカチャ」が良いんだよね。

鈴木:
なに? カチャカチャって?

ハウルの動く城

押井:
なんか、円盤が回るじゃない、カチャカチャ。四つ色が分けてあって、カチャカチャ回すと違う世界に行くんだよね。四分の一は真っ黒に塗ってあるわけ。真っ黒のとこに回して、ドアが開くと、戦争やってるんですよ。業火に燃えている戦場で、主人公のハウルが怪物になってバッサバッサ飛び回ってるわけ。
そこから帰ってくると、血みどろでヨレヨレになってるんだよね。で、火の妖精かなんかが「いい加減にしたほうが良いよ」って、「そのうち、元に戻れなくなるよ」って。
あのカチャカチャってなんなんだろうって。で、「あ、わかった」って。あれって、男の内面の話なんだよね。男って、4つくらい世界持ってるんですよ。どんなオヤジでも。そのなかの四分の一は、家族にも見せられない、奥さんにも見せられない、自分の娘にも見せられないダークサイドがあるんですよ。四分の一くらい。多い人は、半分くらいあったりするんだけどさ。そこは、宮さんわかってるんだな、さすがにって。感心した。

ハウルの動く城

押井:
そこに行くと、もしかすると怪物になって死んじゃうかもしれないんだけど。帰ってくるとフラフラになってるしさ。そういうふうなものを持ってるのが、男なんだっていうさ。女の人も同じかもしれないけど、男だったら誰でも共感できるっていうさ。こういうことやってるんだっていうさ。

鈴木:
宮さん、けっこうそれテーマだよ?

押井:
そうそうそう。だけど、今までそれやらなかったじゃない、作品のなかでは。

鈴木:
一応、やってんのよ。

押井:
あれだけ露骨にやったのは初めて。

鈴木:
まあね。そう、あれは露骨だった。

ハウルの動く城

川上:
ぼくも、ジブリ作品でいちばん好きなのは『ハウル』なんですよ。でも、見てるとこは、ちょっと違うなと思ったんですけど。
ぼくは、ハウルの感情移入させるとこが凄いなと思ったんですよね。ソフィーの気持ちも、よくわかったし。宮崎監督が、自分自身を投影させているなっていうのを、すごい感じたんですけど、その感情移入のさせ方がメチャクチャじゃないですか。
ストーリーとか関係なしに、「こういうのもあるよね、こういうのもあるよね」っていうようなシーンが、いろいろ出てくるんですけど。ストーリー的には全然つながってないんだけれども、感情移入のさせ方がすごい見事で。

押井:
表現ってことで言うとね、すごく円熟してると思った。シーンの作り方とか、状況の作り方とか、話の持っていき方とか。さすが、円熟しているなって。だけど、つながってないです、確かに。バラバラなんです。

川上:
だから、逆にすごいように見えたんですよ。全然つながってないのに、一応つながってるようになってることが、すごいバランスだなと思って。

押井:
そもそも、あれソフィーの映画になってないじゃない。

鈴木:
そんなのどっちでも良かったんだもん。

押井:
ソフィーの映画だって言ったじゃない、だって。それは、ソフィーの映画なんだっていうさ。
そもそも、彼女がお婆ちゃんになっちゃって、それが話とシーンに関係ないじゃない。

川上:
そうなんですよ。途中で終っちゃうんですよね。

押井:
実は、宮さんがやりたかったのは、いろんな世界に出入りする人間の話なんで。

The art of Howl’s movingcastle
宮崎駿監督が『ハウルの動く城』を作るために描いたイメージボードやストーリーボードと、その世界を作った美術、背景やキャラクター設定などをカラーで紹介。作画監督や美術監督など主要スタッフのインタビューのほか、完成台本も収録。

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