宮崎駿「教育について」

宮崎駿さんが語る教育方針。『教育について』という書籍があります。
この本は、複数の著名人にインタビューされ語り下ろされいています。宮崎駿さんの「人間について」の深い洞察や、「仕事に向かう一途さ」が伝わってくる一冊です。



宮崎さんは、自身のアトリエ・二馬力の隣に、「3匹の熊の家」という社内保育園を作るほどの子ども好きとしても知られています。もともと児童文学に興味をもっており、アニメーションは子どものものと公言する宮崎さん。教育についても、一風変わった自論を持っています。その一部をご紹介します。

宮崎駿「教育について」

教育にマニュアルはない

教育でも、マニュアルばっかりあって、いちばんいいやり方がどっかにあるんじゃないかと思うから、すぐ専門家に相談して、私のやり方はどうですかって聞くでしょう。マニュアルなんかないって思った方がいいですね。

(略)

自分がいい学校を出たから、わたしは得しているとか損しているとか、つまらないことを子どもに自慢している親は説得力ないですよ。自分の非常に愚かな、空洞化した価値観を子どもに押しつけようとする結果、子どもは困るんですから。相談している母親、あなた自身が自分のことを考えた方がいいんじゃないっていうことが多いですね。

ある瞬間の、変な楽しみ方を教えてあげる

正しく導くとか、勉強を教えるという能力はないですけれども、ある瞬間の、変な楽しみ方を教えてあげることはできるんじゃないかなと思ってます。つまり、母親ならぜったいやらないようなことね。変な車にのっけて暴走するとか、やってはいけないことをこっそりやらせてあげるとか。小学校五年生の連中が、山小屋に来たとき、チェーンソー(電動のこぎり)をやらせたんですよ、これは怖いですよ。間違えば指がとんじゃいますからね。だけどおとながついてるのやめました。いつギャーッと悲鳴あがるかドキドキしてましたが。ところがあれ、やってみるとあまり面白くないんです。薪割りは斧のほうが面白い。斧でパカンと割ったほうが気持ちいいんですよ。で、斧を使わせてみたら、皆飽きずにやっていました。斧は重いですからこれも怖いんですが、でも、ちゃんと最初に気をつけておくと、案外事故は起こらないですね。
おじさんの効能だとぼくは思っています。そういうことをやらせるチャンスをつくるというのは、母親なんかいたらぜったいできない。すぐ、気を付けないさいと叫ぶんです。かえってそのほうが危ないことがあるんです。

宮崎駿さんは芸術家なので、本質的なところに響く発言をします。
一般的な教育において、真似をするのは難しいことが多いかもしれません。特に、チェンソーを小学生に使わせるなんて、絶対できません(笑)。
しかし、すべてを実践することはできなくても、本質を忘れずにいたいですね。

この本では、宮崎さんを含め、6名が教育について語り下ろしています。

教育について

  • 宮崎駿「子どもにいちばん大事なもの」
  • 山田太一「癒しを求める心」
  • 岸田今日子「自分の好きなことを見つける」
  • 網野善彦「歴史を学ぶ面白さ」
  • 落合恵子「『女・子ども』の視点から」
  • 窪島誠一郎「無言の絵はいのちを語る」
教育について
異なる分野で活躍する6人が「教育について」語ったインタビュー集。

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