『耳をすませば』に登場する猫のムーン。とても印象的で重要なキャラクターですが、原作とはだいぶ違ったイメージで描かれています。
映画では、左耳の毛色が違う太った猫として登場します。実はこの猫のイメージは、スタジオジブリで飼っていた、ウシコという猫がモデルとなっています。
そのため、原作とはまったく違ったイメージの猫として描かれました。
では、原作漫画ではどんな猫だったのかというと、スリムな黒猫として登場しています。どちらかというと、『魔女の宅急便』のジジに近い印象でしょうか。
さらに、ムーンとルナという2匹の黒猫が登場しているのですが、映画では1匹に変更されました。
これらの理由というのは、黒猫だと『魔女の宅急便』のイメージに引っ張られるということと、1匹のほうが物語を整理しやすいということからです。
しかし、当初、近藤喜文監督は「原作通りやりましょうよ。『魔女の宅急便』で出してるといっても猫といったら黒猫じゃないですか」と提案しましたが、宮
崎駿監督は「俺はそうは思わん」と反対の姿勢です。そして、社内では黒猫とウシコ風のムーンで、どちらが良いか人気投票が行われたのです。
その結果、近藤喜文監督は負けてしまい、映画に登場した太っちょなムーンが出来上がりました。
もし、この人気投票で黒猫が勝っていたら、別の『耳をすませば』が生まれていたかもしれません。
漫画『耳をすませば』 解説エッセイ/鈴木敏夫、対談/近藤喜文&柊あおい、あとがき/柊あおい |