高畑勲展 叶精二トークイベント7月21日に「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」で開催された、映像研究家・叶精二さんによる講演会「高畑勲の革新的アニメーション演出術」に行ってきました。
今回の展覧会を開催するにあたり発掘された資料や、高畑勲監督が確立した演出手法に、影響を受けた作品の紹介など、とにかく濃い内容となりました。



講演は二部構成となっていて、第1部では「高畑勲展 調査活動報告書」と題して、第2部「時空間を填塞(てんそく)する」

この日は曇天でして、今ひとつな天候に叶さんは『おもひでぽろぽろ』のセリフ「晴の日と曇りの日と雨の日、どれが好き?」を引用して、「絶好の高畑勲監督日和」という宣言で講演会の幕は開けたのでした。

第1部は「高畑勲展 調査活動報告書」と題して、新たに発見された資料の紹介と、高畑勲監督の確立した演出手法について紹介されました。
高畑監督はアニメーションの開拓者であり、宮崎駿監督の素晴らしい作品も高畑監督が作った技術の上にあるわけで、アニメーションの技術を作った稀有な存在であると、その偉大なる功績を強調されていました。

宮崎駿が描いた『リトル・ニモ』の絵コンテ

今回発掘された資料として印象的だったのが、宮崎駿監督が描いた『リトル・ニモ』もパイロットフィルムの絵コンテです。惜しくも今回の展示で紹介することはできなかったそうですが、ラピュタの浮島や、巨神兵のようなキャラクターなどなど、後のジブリを象徴するようなモチーフの数々がありました。残念ながら宮崎さんは『リトル・ニモ』からは途中で降りていますし、それらのイメージはすべてスタジオジブリで結実することとなります。

宮崎監督がまだ若手アニメーターだったころから、『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』の基となるイメージを持っていて、ことあるごとにそれらのイメージを提案しては跳ね返されて、と繰り返してきたわけですね。もし、若手の頃にすべて採用され出し切っていたら、現在の宮崎駿監督はないと思うので、ほんとうに人生というものはわからないもんですね。

高畑勲が『安寿と厨子王丸』で成したこと

高畑勲監督が携わっていたことが発覚した『安寿と厨子王丸』の絵コンテ。これも今回発見された資料によって明らかになったことです。
これまで高畑監督は、入社直後はどんな仕事をしていたのかハッキリしていなかったそうですが、新たに見つかった資料によりその一端が明らかになりました。
『安寿と厨子王丸』には高畑監督の名前はクレジットされていないのですが、絵コンテの内容を見たところ、演出助手を務めていたようです。高畑監督が行なった内容は、新人とは思えないほど大きな役割を果たしています。

安寿と厨子王丸

昔のアニメーションというのは、キャラクターが感情をあらわにし涙を流すようなシーンのときは、あまり真正面から描くことがなかったそうです。『白蛇伝』を思い返してみても、確かに横顔が多いと思います。
しかし、この『安寿と厨子王丸』では、真正面の安寿が何度か描かれます。絵コンテではこの描写のところに上から紙が貼られ、正面の顔に描き直されているのですが、裏から透かして見たところ、元の絵はやはり安寿の横顔が描かれていました。
また、『かぐや姫の物語』で、かぐやが鬼の形相で疾走していたシーンも、真正面だったことを思い出させます。

溝口健二の影響

本作『安寿と厨子王丸』は、森鴎外の小説『山椒大夫』をアニメーション化したものです。
そして、『安寿』制作の5年前には、溝口健二監督によって実写版『山椒大夫』が作られています。
高畑勲監督は、溝口版の『山椒大夫』に影響を受けていたといい、『安寿』では似たようなカットがあり、オマージュとも取れるシーンをいくつか再現していました。
比較動画を見ながら、叶さんによる解説を聞くのは、とても面白いものでした。

第2部でもまだまだ沢山語られていたのですが、とりあえず今回はこの辺で……。
いずれ、叶さんには高畑勲研究をまとめた本を出してほしいと思いました。

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