今では『平成狸合戦ぽんぽこ』というタイトルも当たり前になっているので、特に違和感を抱かないかもしれませんけど、これまでのジブリ作品と比較してみると、タイトルに毛色の違いを感じないでしょうか?
どこか洗練されていない感じもあるし、タイトルに元号が入っているのも珍しいですよね。
しかし、これらの野暮ったいタイトルは、高畑勲監督が意図してつけたタイトルだったのです。その狙いには、何があったのでしょうか。
バカバカしさを表したタイトル
まず、タイトルを考えるうえで軸となったのが、阿波狸合戦にちなんだ「狸合戦」という言葉。高畑監督は、こういった言葉が昔からあるのだから、使うべきであると言い、こうして「狸合戦」は決まりました。
そして、「どうせ、バカバカしい話なんだから」と言って、平成になったばかりということもあって、この「平成」って言葉には、そのバカバカしさがつきまとっていると主張します。それを付けることによって、作品の意味としてもタイトルとしても面白くなるんじゃないかと考え、『平成狸合戦』というタイトルができ上がりました。
後から付けられた「ぽんぽこ」
ところが、それを見た日本テレビの奥田誠治さんが、「高畑さんの作品には、いつも“ほ”の字が入りますけど、今回はないんですね」と指摘をします。
そこで高畑監督が、もう一捻りして出したのが「ぽんぽこ」だったのです。
こうして、『平成狸合戦ぽんぽこ』というタイトルが完成しました。
しかし、このタイトルには宮崎駿監督からは「なぜジブリでこんなタイトルの映画を作るんだ」と疑問がとび出し、当時交流を持っていた作家の井上ひさしさんからも「内容はとても良いけれど、タイトルが良くない。変えた方が良い」と指摘されるくらい評判の悪いタイトルだったのです。
今ではもうすっかり定着した『平成狸合戦ぽんぽこ』というタイトル。もし別のタイトルだったら、どのような評価になっていたでしょうね?
ジブリの教科書8 平成狸合戦ぽんぽこ 池澤夏樹、似鳥鶏らが作品の魅力を解き明かしつつスタッフの回顧録も収録 |