ノリタケ×スタジオジブリ「12ヶ月マグカップ」

ジブリ美術館に行くたびに、少しずつジブリグッズを買ってきているんですけども、今回はノリタケ×ジブリの食器シリーズ「12ヶ月マグカップ」を買ってきました。
美術館だけで販売されているという付加価値もさることながら、美術館グッズはどれも魅力的なものばかりです。



今回買ってきた「12ヶ月マグカップ」は、1から12までの数字があって、その月のイメージでトトロが描かれています。素材は、ボーンチャイナという牛の骨灰が使用された磁器で、透き通るような白と、美しい艶が特徴です。

このノリタケとスタジオジブリのコラボ食器は、1993年から始まりました。
企画の始まりは、宮崎駿監督から「雑草とトトロをテーマにして良い食器ができないか」と提案されたことが切欠となります。

その提案を受けて、スタッフはいろんなキャラクターものの食器をサンプルとして集めたそうですが、どれも宮崎監督に「こういう食器じゃない」と否定されます。「もっといい食器で」と言われたことから、老舗ブランドのノリタケに行きつくことになったそうです。

ノリタケ×スタジオジブリ「12ヶ月マグカップ」

このノリタケ×ジブリ食器シリーズの絵柄は、ジブリでアニメーターとして活躍した、故・二木真希子さんが描いていました。1997年から2017年まで毎年発売していたイヤリープレートは、二木さんが描いていたことで有名です。

しかし、ジブリ美術館のカフェで使われているお皿や、この「12ヶ月マグカップ」は、宮崎駿監督が自ら描いています。宮崎監督のやわらかな水彩画が特徴的ですね。

ノリタケ×スタジオジブリ「12ヶ月マグカップ」

ノリタケの良いところは、下絵つけの技術です。表面にプリントしただけのマグカップだと、洗っているうちにすぐに剥げてしまいますが、ノリタケは違います。
原画を印刷した紙を貼って、その上からもう一度、釉薬を塗って焼くので、生地の中に絵が溶け込んで、表面がツルツルになっています。

100年以上に亘り、食器を送り出してきたノリタケと、スタジオジブリのコラボ食器は、この先も何十年か、それこそ100年というスパンで残っていくものだと思います。
皆さんもお一つ、大事に使い続けられる、ノリタケ×ジブリの食器をお求めになってみては如何でしょう。

最後に、宮崎駿監督がノリタケに贈った手紙を掲載しておきます。

ご挨拶

このたび、トトロのお皿やカップがみなさんの努力で世に出ることになって、本当にうれしく思っています

トトロ達と共に描かれた草や葉や花は、みんな私達の周辺でよく見かけるごくありふれた植物達です。ふつう雑草とか雑木とかいう言葉で片づけられて来た者達が意匠となって洋食器がつくられるなんて、おそらく日本で初めての試みではないでしょうか。

忙しさにかまけながらも立ち止まり、あらためて道端の草や小さな花を眺めると、私達の住むこの島国がどれほど豊かな植物にめぐまれていることかと、感謝の気持ちが自然に湧いて来ます。

植物達のいきおいが盛んな時代には雑草―よけいなもの、として敵視すらして来たのに、これだけ人間が国土を荒らしてしまうと、一本の草もいとおしくなって来ます。

いま、時代は大きくゆらぎ、昨日までの定説や常識もあてになりません。日本人の私達の自然観や価値観も大きく変わっていくことでしょう。

たしかに、一方ではバイオ等の技術で植物の改造に熱中する人々もいます。でも同時にありのままのかざらないものをもっと大切にしようとする人々も増えていくと思います。

鉄で刈込み、落葉ひとつない空間を美しいとする考えもやがてもっと自然にむしろ一寸荒れた感じを美しいとする感性に変化していくのではないかと思ったりします。

雑木や雑草を意匠にとり入れたトトロの洋食器は、その流れのさきがけになるのではないかと…、これは勝手な妄想ですが、私達の祖先は、世界にも類のない植物の意匠の歴史をつくって来ました。家紋ひとつとってもこれほど植物を観察し、洗練されたデザインに育てた民族はありません。

今回のトトロの植物達は、意匠というには素朴で、はばかれるほどつたないものですが、これから何年も何代もかけてやがていつかブドウ唐草や、アーカンサスの十字唐草のような意匠に育っていったらなんて、空想も楽しんでいます。

宮崎駿