『ハウルの動く城』に登場するキャラクターに、ヒンという犬がいます。
王宮に住むハリマン先生の使い犬なのですが、この犬の風貌が押井守監督に似ていることから、モデルになっているのではないかと言われています。
原作で、ヒンは国王の弟のジャスティン殿下が、呪いによって犬にされており、そのためなのか、宮崎駿監督が描いたイメージボードでも、初期のものは、若干人間よりの顔をしています。
しかし、映画では、押井守似のヒンとなって登場。なぜ、ヒンが押井守になったのか、詳細は不明だけれど、宮崎監督のなかで、犬を描くにあたって思うところがあったものと思われます。押井監督は愛犬家で有名ですので。
以下、犬を溺愛する押井守監督について語る、宮崎駿監督のインタビュー。『風の帰る場所』より。
なに犬に狂ってんだ、バカ
――押井守さんから、宮崎さんについては、いろいろ面白いコメントをいただいてるんですけど、宮崎さんからはどうなんですか?
宮崎:
いや、なに犬に狂ってるんだ、バカってね。
――よく知ってますね。
宮崎:
知ってますよ。人の犬に悪口言ってきてね、それで、喧嘩したんですから。汁かけ飯がなぜ悪いってね。僕は汁かけ飯で犬飼ってたんですよ。それで十七年も生きましたからね。
だけど、押井守は、なんか犬のために伊豆に引越ししたでしょう。家の周りに犬の通路作ったりしてね、そのバカ犬をさ、雑菌に対する抵抗力がないから外に出さないとかね。
それを聞いたとき、なにやってんだこいつ、って思ったんですよ。大体、ブリーダーってみんな胡散臭い顔してるでしょ(笑)。
押井さんにいったんですけどね、『そんなに犬が好きなら、愛犬物語作れ』って。くだらないもの作ってないでね。人間の脳みそが、電脳がどうのこうのなんて、そんなんじゃなくてね。
(略)
自分が短足だからって、短足の犬飼うなってね。そのバカ犬がさ、家の中にウンコとかおしっことかしてると聞くと嬉しくてね。
――しかし、押井守の宮崎駿評と、宮崎駿の押井守評ほど面白いものはないですね。
宮崎:
いや、基本的に友人ですからね。だから、元気に仕事やっててほしいんですけどね。
目つきの悪い犬
本作で作画監督を務めた、稲村武志さんは、参考にした犬は特になく、宮崎駿監督が描いた絵コンテに従って描いたと話しています。
宮崎監督からは、「いしいひさいちさんの漫画『となりの山田くん』に出てくるポチではないけれど、目つきの悪い犬です」と言われていたそうです。
また、ヒンが押井守監督のモデルと言われていることに対して、押井監督本人は以下のように話しています。
『誰も語らなかったジブリを語ろう』より。
イヌが僕なら、ハウルは宮さん
押井:
あれはさー(笑)公開当時、スタッフにもさんざん言われたけど、明らかに僕に対する悪意を感じるよね。だってヒンってダメイヌでしょ。性格も悪そうだし。
――だから押井さんなんですよ。「押井さん出たぁ!」って思っちゃいましたから。
押井:
僕も自分の作品のなかでさんざんからかって来たからさ。『パト』に登場する上海亭のオヤジの名前を「崎宮駿」にしたりしてるし。高畑さんは「高畑警部」として登場させて、まあ、こっちは悪役だけど(笑)。言うまでもなく、鈴木敏夫は何度も出しているから。
でも、そのイヌが僕だというなら、ハウルは宮さんだよね。主人公に自分を投影したのって『豚』以来じゃない?
『ハウルの動く城』飛行カヤック ハウル商品の決定版「飛行カヤック」乗船しているのは、ハウル、ヒン、ソフィー、荒地の魔女。 |