ジブリ関連の展覧会で発売された図録を、10選に絞ってご紹介します。
ほんとうは、もっと沢山オススメしたい図録があるのですが、その中の選りすぐりの10選でございます。
三鷹の森ジブリ美術館
まず一つ目のご紹介は、なんと言ってもここは抑えておかなければならないでしょう。
三鷹の森ジブリ美術館の図録です。
2001年に開館された、宮崎駿監督がデザインした美術館です。
館内は全面撮影禁止ですが、この図録では内部の写真もたくさん掲載されていますし、建設にあたっての豆知識も得ることができます。
これまでに開催された企画展示や、短編映画の紹介などはもちろん、高畑勲監督が宮崎駿監督に贈った文章なども掲載されています。
ジブリファンだったら絶対に持っておきたい1冊です。
ちなみに、美術館の図録は、2001年の開館から2021年の現在に至るまでに何度も増補改訂されたもので、4冊も買ってしまいました。
高畑勲展
二冊目のご紹介は「高畑勲展」の図録です。
2019年に東京国立近代美術館で開催された展示で、高畑勲監督が亡くなって間もなくだったため、ここで初めて公開された史料なども多数ありました。
展示は、高畑監督が東映動画の入社間もない頃に携わった「ぼくらのかぐや姫」から始まっています。
当時、東映動画では、かぐや姫を映像化するとしたら、どのように作るかという企画案を募集していて、そのときに高畑監督が書いた、貴重な脚本プロットが掲載されています。
とにかく、読み物のボリュームが凄まじいです。制作にあたってのメモだったり、『太陽の王子 ホルスの大冒険』においては、テンションチャートと呼ばれる登場人物の感情のアップダウンを記したグラフなども収められています。
「ぼくらのかぐや姫」から始まり、遺作となった『かぐや姫の物語』まで紹介されるという、展示会場と同じ構成で収録されています。
ALL ABOUT TOSHIO SUZUKI
こちらの書籍は、本屋で普通に販売されている本なんですけど、元々は鈴木敏夫さんを特集した企画展の図録として企画されました。
しかし、コロナ禍となり展示が延期されたため、書籍だけ先行して発売されたものです。ということで、一応図録枠で紹介させてください。
後に、企画展は「アニメージュとジブリ展」として開催されましたが、展示内容はだいぶ間引かれてしまったので、こちらの書籍のほうが充実しています。
鈴木さんが学生時代に手掛けた同人誌であったり、徳間書店に入社してから携わった朝日芸能の仕事も掲載されています。
そして、アニメージュの創刊からスタジオジブリへと繋がっていく道筋なども、余すところなく紹介されているのはもちろんのこと、仕事に関するメモであったり、手紙であったり、そういった資料の掲載が嬉しいところです。
現在の鈴木さんは、わりと特徴的な文字を書くことで知られていますけど、入社当時から現在と近い文字だったことがわかりました。
男鹿和雄展
ジブリ作品の背景美術でお馴染みの、男鹿和雄さんの仕事を特集した「男鹿和雄展」の図録です。
本展は、2007年に東京都現代美術館で開幕し、2010年まで全国各地を巡回しました。
男鹿さんが携わった『幻魔大戦』や『はだしのゲン』だとか初期作品から始まり、ジブリ作品が中心に紹介されています。
2007年の開催なので、『となりのトトロ』から『ゲド戦記』までの掲載内容となっています。
その他にも、男鹿さんが手がけた絵本の挿絵なども、収められています。キャプションやインタビューなど、活字はちょっと少なめですけども、男鹿さんの絵がたくさん見たい方にはオススメです。
山本二三展
これまたジブリ作品の美術監督としてお馴染み、山本二三さんを特集した「山本二三展」の図録です。
本展は、2011年頃から開催され、2021年現在も全国各地を巡回しています。
近年では、二三さんは故郷の五島列島の風景を描く「五島百景」を完成させたり、精力的に活動されています。
もしかしたら、新しい図録は増補版になっているかもしれませんが、ぼくが持っているのは初版であります。
その初版の内容はと言いますと、ジブリ設立以前の『未来少年コナン』や『じゃリン子チエ』といった作品の背景画から、ジブリ作品や細田守作品まで掲載されています。
その他、『リトル・ニモ』だったり、『グスコープドリの伝記』といった劇場作品や、テレビアニメやゲーム、絵本用に描かれた挿絵なども掲載されています。
図録の頭には、二三さんのインタビューも収められていて、
高畑・宮崎作品の背景美術についても話しています。
近藤勝也展
これは、2017年に愛媛の新居浜「あかがねミュージアム」で開催されたときの図録です。
実は、2012年にも「近藤勝也展」が開催されているのですが、そのときはこの図録ではなく、もっと薄いパンフレットが発売されました。
本の挿絵や装丁画だったり、ゲーム用のイラストなど、ジブリ作品だけではない近藤勝也さんが手掛けた仕事が収められています。
それから、近藤さんが子供時代に描いたイラストも収録されていて、なかなか見ることのできない幅広い内容となっています。
これは1冊1000円だったんですけど、価格のわりに掲載内容が豊富で、コスパが良いと当時も評判の良かった図録です。
近藤喜文の仕事
この本は、アニメーターの安藤雅司さんが、敬愛する近藤喜文さんの功績を残すために編集した本です。
元々図録として発売されたものではなかったはずですが、後に「近藤喜文展」の図録として扱われるようになったので、図録枠での紹介とさせてくださいませ。
近藤喜文さんは、スタジオジブリ設立以前から高畑・宮崎作品で活躍していた天才アニメーターで、『耳をすませば』の監督としても有名なところですね。
近藤さんがAプロダクションに在籍していた当時の初期作品から、高畑作品の『赤毛のアン』、世界名作劇場といった数々の仕事が網羅されています。
スタジオジブリ・レイアウト展
2008年に東京現代美術館で開幕した「スタジオジブリ・レイアウト展」の図録です。
本展は、10年に亘り日本全国と海外にも巡回し、2018年に幕を閉じました。
高畑勲・宮崎駿の初期作品から、スタジオジブリ作品のレイアウトに焦点を置いた展示で、映画においてレイアウトがいかに大事であるか紹介されました。
レイアウトがたくさん見れるのも嬉しいところですけど、高畑・宮崎コンビが発展させていったそのレイアウトの解説が読めるので、これはぜひジブリファンの人には読んでもらいたい一冊です。
ジブリの立体建造物展
2014年に江戸東京たてもの園で開幕した展示で、その後、2018年まで全国各地を巡回しました。
スタジオジブリ作品に登場する建物をピックアップした展示で、その建造物について建築家の藤森照信さんが一点一点解説しています。
それから、宮崎駿監督や、美術スタッフのキャプションなども掲載されているので、ジブリファンとしては嬉しい豆知識も得られます。
巻末には、宮崎監督と藤森さんの対談も掲載されていて、読み物としても充実している一冊です。
日本漫画映画の全貌
10冊目、最後のご紹介は「日本漫画映画の全貌」です。
もっとスタジオジブリっぽい図録をご紹介しようかと思ったんですけども、日本のアニメーションの発展がわかりやすいこちらの図録にしました。
これは、2004年に開催されたときのものです。日本のアニメーションの父と呼ばれる政岡憲三さんの紹介から、東映動画の設立や、森康二さんや小田部羊一さん、奥山玲子さんらの紹介を経て、最終的にスタジオジブリが紹介されています。日本のアニメーション黎明期から、スタジオジブリ設立までの道筋がわかりやすくまとめられています。
政岡憲三さんから始まり、東映動画が設立され、スタジオジブリへと繋がっていったこの流れを見ていると、ジブリが果たした役割も大きいんだろうと思わされます。ここから先は、ジブリから影響を受けた新たな表現者が歴史を創り、別の形でジブリが継承されていくんだろうなと。
スタジオジブリ自体も、まだまだ発展していきますけどね!
そんなわけで、オススメの図録10選でした。何か興味のあるものがあったら、探してみては如何でしょうか。
それぞれ、ネットオークションやフリマや古本屋で手に入るものばかりだと思います。
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