もののけ姫 エボシ御前

『もののけ姫』のエボシ御前とサンが母娘であるという話が、ネットを騒がせているようです。
エボシは後醍醐天皇と男女の関係にあり、サンの父親は後醍醐天皇だったというもの。
まず結論から言っておきますが、ジブリが公式に発表した設定には、こういった情報はありません。



二次創作や、突飛な解釈が嫌いなわけではないのですが、ジブリオタクとしては、間違った情報が真実のように広まってほしくないので、宮崎駿監督が発表している、エボシ御前の設定をご紹介します。

重ねてお伝えしますが、公式本を読んでいなくても考察するのは自由だと思いますし、設定と違う解釈が嫌いなわけでもありません。
作品は作者の手を離れた時点で、受け手のものになりますし、どのように受け取っても良いと思っています。

しかし、『となりのトトロ』のサツキとメイは死んでいるといった都市伝説のように、存在しない設定を信じ込む人が大勢出てくると、心地悪さのようなものがあり、やはり気になってしまうのがファンというものなのです。ご了承ください。

ということで、エボシ御前の公式設定をご紹介しますが、誰かをバッシングする意図ではないことをご理解ください。

ジブリ作品は、あまりにもデマの情報が真実のように広まってしまうため、公式側の設定と比較したときに整合性がとれない、ということをご説明します。

エボシ御前のバックグラウンド

エボシは、身売りにされた女性たちや、病に苦しむ人など、行き場の無い社会的弱者を差別することなく教育し、仕事を与えて、タタラ場の人々からは敬われ慕われています。

しかし、かつてのエボシは、タタラ場の女性たちと同じように人身売買されていて、倭寇の妻となっており、彼女自身が社会的弱者の立場にいたという過去があります。

このことについては、宮崎駿監督の著書『折り返し点』に収録された、網野善彦さんとの対談で語られています。

網野:
この映画はお話としてもたいへんにおもしろいんですが、深山の麓でタタラ集団を率いている女性“エボシ御前”は、女性たちをはじめ、私からみると「非人」と思われる人たちや牛飼いなど社会からはみ出した者たちに仕事をさせて、尊敬を集めています。遊女、白拍子に見えますが、どういうお考えであのような女性を登場させたのですか。

宮崎:
悪路王をしずめた立烏帽子という絶世の美女の伝説があるんですが、実は私の山小屋のある村が烏帽子といいまして(笑)。案外、出発点はそのあたりだったりするんです。海外に売られて、中国人の倭寇の大親分の妻になって、腕を磨いて、あげく男を殺して財宝を奪って、戻ってきた女とか(笑)。

この身売りにあった経験からエボシは、社会的弱者にかつての自分を重ね、同じような境遇の女性たちや、苦しむ人々の救済を目指すようになっていった。というのが、宮崎駿監督の考えたエボシ像のようです。

まず、この時点で、仮にエボシがサンの親だとしても捨てるとは考えにくいのではないでしょうか。

劇中には、モロの「森を犯した人間が、わが牙を逃れるために投げてよこした赤子がサンだ」というセリフがあります。
近代人の感覚を持ち、神をも恐れないエボシが、逃げるために赤子を投げるでしょうか。

第三者がサンを奪って捨ててしまったと創作してしまえば、如何様にもなってしまいますが、考察としては説得力に欠けてしまいます。

『もののけ姫』の時代設定

それから、後醍醐天皇とエボシの間に生まれた子供がサンということについて。

面白い考察だと思うのですが、後醍醐天皇は1288年に生まれ1339年に亡くなっています。

『もののけ姫』の時代設定については、宮崎駿監督自身が室町中期と言っていますし、作中のエボシのセリフからも「明国」という言葉が出ています。
明国とは、中国大陸の王朝で、1368年から1644年まで存在した国家です。

つまり、『もののけ姫』の世界は、1368年以降ということになるため、後醍醐天皇はもうお亡くなりになっています。

エボシ御前と後醍醐天皇が男女の関係にあり、その子供がサンだったという考察は面白いですけど、以上の公式側が発表している設定と照らし合わせると、無理があると言えます。

今回の件は、個人の感想を公式設定と勘違いした人が大勢出てしまったというケースですが、ネット上にはジブリ作品に関するデマ情報もたくさんあります。まずその情報が本当なのかどうか考えて、ワンクッションおいてから拡散したほうが良いかもしれませんね。

裏設定や、ロケ地といった情報は、裏付けのない間違ったものも沢山ありますので。
近年のSNS時代は、デマが真実のように広まってしまうので、ほんとうに難しいですね。

ちなみに、鈴木敏夫さんは、後醍醐天皇を題材に映画化しないかって、宮崎駿監督に提案したことがあるそうですよ。スルーされたそうですけど。
これは、デマでも妄言でもなく、本当の話です(笑)。

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