頭の上のチッカとボッカ

米林宏昌監督の長編アニメーションデビュー作『借りぐらしのアリエッティ』は、宮崎駿さんが企画・脚本を担当しています。
実はこの企画を立ち上げた宮崎さんは、まだ若いころ、この作品の原作であるメアリー・ノートンの小説『床下の小人たち』をアニメーション化しようと試みたことがあります。



今から約50年程前。宮崎駿監督がまだ20代の頃、先輩である高畑勲監督と一緒に、どうにか映画化できないか模索していたといいます。

この『床下の小人たち』を高畑さんが最初に読んだのは、東映動画に入社したてのころだったそうです。初版が出たのが1956年ですので、ほぼ発売と同時期に読んでいたそうです。

熱心に読んでいたそうですが、当時はまだ高畑さんも自分が企画を提出するような立場になかったため、このころはアニメーション化などは考えてはいませんでした。

その後、高畑監督と宮崎監督は、東映動画からAプロに移ります。ここで、アニメーション作品の企画を考えるときに、メアリー・ノートンの『床下の小人たち』を原案に、アイヌを題材にして小人が狩りをするという話を考えます。そのときのタイトルは、『屋根の上のチッカとボッカ』というタイトルだったそうです。

結局、この企画は成立することなく、高畑さんはこの『屋根の上のチッカとボッカ』からは離れていきます。
しかし、宮崎駿さんはこの企画を引き継いでいき、『頭の上のチッカとボッカ』というタイトルで、TVアニメーション化の機会を得ることになります。

頭の上のチッカとボッカ

宮崎さんは、キャラクターデザインまで考えて企画は進行していきました。
ところが、放送局からこの作品を担当している作家を聞かれたとき、企画担当者は宮崎駿さんの名前を伝えますが、当時まだ無名だった宮崎さんは受け入れてもらうことができませんでした。

当時は、手塚治虫さんや赤塚不二夫さんらが抜群のネームバリューで、宮崎駿さんはまだ無名のアニメーターに過ぎませんでした。
こうして、『床下の小人たち』を原案にしたアニメーション化は立ち消えとなります。

それから、約40年の時が流れたとき、宮崎駿さんは自分の弟子ともいえる米林宏昌監督のデビュー作として、脚本を担当するかたちで、『床下の小人たち』を昇華することになるのです。