KDDIとスタジオジブリの提携コンテンツ「ジブリの森」が5始まりました。

KDDIとスタジオジブリは5月9日、スタジオジブリ初のスマートフォン向け公式サービス「ジブリの森」を、月額390円の「auスマートパス」限定で公開した。スタジオジブリの人気作品の中から毎月1作品をピックアップし、特集記事などの読み物コンテンツを配信。特別付録として「待ち受け画像」や「クイズ」などのコンテンツも用意する。さらに、スタッフの日誌や映画の最新情報を「ジブリ通信」として配信する。



KDDIとスタジオジブリは、2011年に公開された映画「コクリコ坂から」の際にも、同作のスペシャルムービーをau限定で配信したり、作品の舞台である横浜市と連携した共同キャンペーンを展開したりしている。今回、両社が再びタッグを組んだ狙いを、ドワンゴの代表取締役会長で、スタジオジブリのプロデューサー見習いでもある川上量生氏と、KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏に聞いた。

――川上さんは2011年1月からスタジオジブリ(以下、ジブリ)のプロデューサー見習いとしても活動しています。当時はドワンゴに出社するのは週1回とも言われていましたが、現在もその状態が続いているのでしょうか。

 川上氏:実は最近はあまりジブリのオフィスには行っていないんですよね(笑)。主に恵比寿の事務所で働いていることが多いです。

――では、ジブリでの活動内容にも変化があったのでしょうか。

 川上氏:今回のKDDIとのコラボもそうですが、実際に動き始めた企画がいくつかありまして、その作業をここ(事務所)でやっているというところです。恐らくどこかでも何となく言ってしまっていると思うのですが、いま吾朗さん(宮崎吾朗監督)と新しい企画を進めています。

――現在もジブリでは「プロデューサー見習い」という肩書きなのでしょうか。

 川上氏:僕はもう一生見習いでいきたいと思っています。もしかしたら将来的に見習いという肩書きを取っていただけるかもしれませんが。

――今回はジブリを代表して川上さんにお話を聞いていますが、川上さんがジブリにおけるネットPR担当という位置づけなのでしょうか。

 川上氏:そうですね。ただ、僕がやりますと言ったものの、実際にはジブリの方に助けられています。それと、鈴木さん(鈴木敏夫プロデューサー)がおもしろがっているところがありまして。ジブリは新しいことに対しては非常に慎重な会社なのですが、ネットに関することに限り、僕からの提案はとりあえず試してみようと鈴木さんの方で思っていただけているので、今回のような企画も生まれたのだと思います。

(略)

――今回もKDDIをパートナーに選びました。なぜマルチキャリア展開をせず、再びKDDIとコラボしたのでしょうか。

 川上氏:やはりジブリがそういう会社なんですよね。普通に考えるとマルチキャリアで展開するのですが、ジブリ的にはそうではなく縁があるところとやりたいというのが基本姿勢ですね。

――「ジブリの森」は、スタジオジブリ初のスマートフォン向け公式サービスとのことですが、どのような思いが込められているのでしょうか。

 川上氏:「ジブリの森」は、もともとネット上でのスタジオジブリの違法画像対策、悪用対策としてKDDIに画像を提供し、安全に楽しんでもらえるサイトを作ろうということで企画が始まりました。

――「ジブリの森」だけのオリジナルコンテンツなども用意しているのでしょうか。

 川上氏:そうですね。たとえばスタッフの日誌などでは、ここまでジブリの内部を公開するのは初めてだと思います。結構写真も満載で(宮崎)駿さんの日常なども見られますよ。簡単なミニゲームも用意していまして、ジブリがオフィシャルにこういったコンテンツを提供するのもかなり異例だと思います。それと「ネズミ編集長」という専用の描き下ろしキャラクターも作りました。

――高精細な原画なども閲覧できるそうですが、これらは設定資料集のデータなどを使用しているのでしょうか。

 川上氏:原画のデータはジブリのデータベースから直接持ってきています。すごく細かいことなのですが、こういうイラストは解像度を高くすれば綺麗にできますが、そうすると容量が重くなってしまいます。なので、「ジブリの森」では機種ごとに最も綺麗に映るように画面サイズに合わせて調整しています。

――「コクリコ坂から」のキャンペーンでは、絵を1枚提供するのにも議論になると話していました。「ジブリの森」ではかなり大胆に情報を公開している印象を受けます。

 川上氏:これはジブリの中でも大騒ぎになりましたね、ここまでやるのかと。ただ、最初に鈴木さんが「どうせやるなら全部出しちゃえ」と。アニメ映像以外で出せるものはすべて出そうと言っていました。とはいえ、実際にどういう見せ方をするかというところは非常に慎重な部分もあったのですが、基本的は相当な情報を公開していると思います。

――KDDIでは、なぜauスマートパスのユーザーに限定したのでしょうか。

 雨宮氏:我々からしてみると(「ジブリの森」は)ものすごい価値のあるコンテンツだと思っています。それをどうすれば最も効果的に扱えるかということもありますし、ジブリに対しても大切に扱っていかなければいけないと思っています。そういう観点から考えて、どのようなやり方が一番良いのかを社内でもかなり議論した結果、我々の中心的なサービスであるauスマートパスの顧客に限定して公開させていただくことになりました。

――auスマートパスの新規ユーザーの獲得にはどの程度寄与すると考えていますか。

 雨宮氏:(「ジブリの森」は)キラーコンテンツになると思いますよ。本当にこれが目的でauスマートパスに入っていただける方も増えるのではないかと。我々としてはそこが1つの大きな狙いですね。

――auスマートパス(月額390円)ユーザーには無料で提供するそうですが、独自のサービスとして価格を設定して提供することもできたと思います。

 川上氏:僕らとしても、これだけのコンテンツを無料で配るのはやはりジブリらしくない。一方でより多くの人に見てもらいたい。そうするとauスマートパスの中で展開するのが一番良いだろうということで、こういう形になりました。

――KDDIとして今後はどのようにジブリ作品とコラボしていきたいですか。

 雨宮氏:我々として当然やりたいという思いはあります。ただし、ジブリはコンテンツをどうやって顧客に見せていくかということをとても大切にしているので、今後についても個別に話し合いながら進めていくことになると思います。

――ジブリとして今後のネットでの情報発信の方針を教えて下さい。KDDI以外のパートナーとのコラボもありえるのでしょうか。

 川上氏:基本auだけだと思っています。それが一番ジブリらしいと思うので。社内でもいろいろと議論したのですが、ジブリってネットで何もしなくても話題になっているんですよね。であれば、そこで僕らが前面に出ることはせず、一緒にお付き合いさせていただいているauからだけ公式な情報を発信していこうと思っています。これ(「ジブリの森」)がジブリの公式サイトです。

――ちなみに(川上氏が会長を務めるドワンゴが運営する)ニコニコ動画とジブリのコラボは考えていますか。

 川上氏:いや、そんなサイトには絶対出しません(笑)。