花とアリス殺人事件岩井俊二監督の初の長編アニメーション作品『花とアリス殺人事件』が、世界最大級のアニメーション映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」長編コペティション部門に出品されることが明かされました。
今年は、95ヶ国から2,605作品の応募があり、グランプリを決めるクリスタル賞のノミネート作品の一本に選出されました。



同映画祭の長編コンペティション部門では、1993年に宮崎駿監督の『紅の豚』、1995年に高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』がグランプリを受賞。2007年には細田守監督の『時をかける少女』、2011年には原恵一監督の『カラフル』が特別賞を受賞しています。

岩井俊二監督が2004年に原作・脚本・監督を務めた、実写映画『花とアリス』の前日譚となる、二人の出会いのエピソードを、完全オリジナルストーリーの長編アニメーション作品として制作されました。

また、同作は、近年では珍しい“ロトスコープ”と呼ばれる実写映像をトレースするアニメーション手法を用いて作られていることでも話題をよびました。
ロトスコープを使用するにあたり、岩井監督はジブリの鈴木敏夫プロデューサーに相談したことも明かされています。
現在では、古い手法とされるロトスコープ。その相談を受けた鈴木さんは、どう思ったのでしょうか。

映画のテーマと表現が一致した、ロトスコープを使った新しい作り方

――今回、アニメを作る前に、実写で全部撮影したんですよね。そこからアニメーションに起すという手法を。

岩井:
そうですね。

鈴木:
10年前も同じことをおっしゃっていたというのか。要するに、ロトスコープをやりたい。自分の記憶だと、ぼく反対した覚えがあるんですよね。なんでかって言ったら、古い映画で、特にアメリカで『指輪物語』とか、それからディズニーなんかもそうなんですけど、一旦役者さんで芝居をしといて、そのフィルムをなぞる形で、芝居を描くっていう、そういうやり方があって。実は、世界のアニメーション界で、それを試みた人は、ほとんどが失敗してたんですよね。

それにあえて挑戦されるっていうんで、岩井さんは知らないからこんなこと言ってるのかな、なんて失礼なことを思ったんだけど。
今回、これも見どころのひとつだと思うんですけど、それ(ロトスコープ)を使った効果が、ほんとうに出ている。やっぱり、新しい使い方だなと思いましたね。

観察して描くっていう、人間が芝居をやるよりも、それを絵にすることで、より印象が強くなるっていうのか、ひとつひとつが。それが観ていて面白かったですね。

岩井:
なぞるっていうと、一見簡単そうなんですけど。結局、描き手の人たちがいっぱいいるわけですけど、一枚一枚絵を描いてるわけですよね。だから、もったいないというか、一枚見ても立派に描けてる絵が、1秒間で8枚ずつ消化されていくという世界で。
それでも、上手く動いたり、実写をそのままなぞっても、綺麗になんなかったり、やってみると苦労はたくさんあって。
だけど、実写やってると、自然に映ってるものを描かなきゃいけないってことで、自分のなかでも気づいてなかったり、目覚めてなかったりしているものに、いろいろ気づかされていくというか。そことのせめぎ合いというか。

鈴木:
その岩井さんそのものの発見が、観ている人に伝わってくる作りになってますよね。それが、もの凄い面白かった。
これ、実写だったら見過ごすところが、手で描いてあることで、再印象するっていうのか。
映画のテーマと表現が、凄い一致してたんで、それは凄い良かったですね。背景も良かったしね。

ジブリ汗まみれ – ウェブサイト「ドリパス」対談

アヌシー国際アニメーション映画祭は、現地時間の6月15日から20日まで開催され、岩井監督も現地入りすることが決定しています。岩井監督の長編アニメーション初挑戦にして、グランプリ受賞なるか注目ですね。

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