スタジオジブリ所属のアニメーター・稲村武志氏が25日、デジタルハリウッド大学 駿河台キャンパスで行われた公開講座「アニメーションの基本」に来場し、ジブリキャラクターの特徴を解説した。
『紅の豚』から『風立ちぬ』まで、数多くのジブリ作品で原画を手掛ける稲村氏は、『ハウルの動く城』『ゲド戦記』『コクリコ坂』では作画監督を担当するなど、第一線のアニメーターとして活躍中の人物。



今回の公開講座では、スタジオジブリに入社した新人アニメーターを教育する際の教材を使用しながら、アニメ作りのイロハの導入部分を紹介するといった趣旨で行われた。

「写真は“記録”」「絵は“記憶”」であると切り出した稲村氏は、富士山の写真と浮世絵師・歌川広重の「富士山」の絵を比較しながら、「写真をそのままトレースして絵に起こしても富士山の雄大さは表現できない。しかし広重は、富士山を枠からはみ出させることによってその雄大さを表現した。絵の場合はデフォルメすることによって、たとえ事実と違った内容となったとしても、記憶から状況を思い出したり、記憶から断片を探して絵を理解することになる」と絵の特性について説明。

それを踏まえて、宮崎駿監督が新人アニメーターによく言うという「絵を描くときは資料そのものを描くな。理屈で物を描いてはいけない。自分たちの見ている世界を、見る人にわかりやすいように描きなさい」という言葉を紹介した。

その後も「『千と千尋の神隠し』の千尋は、精神的な幼さを描くために鼻の下が長かった。しかし千尋が成長するにつれて、ほんのちょっとだけ鼻の下のバランスが変わってくる」「湯婆婆は鼻が大きい方が気が強く見える」「『崖の上のポニョ』の宗助はしっかりした男の子なので、宮崎監督からは何度も口の位置を上げろと言われた」といった作画の秘密を次々と明かす稲村氏。

続けて「トトロを描いてみましょう」と会場に呼びかけると「目の位置を離すと大らかになります。それから動物の口のように口の真ん中を上げて、それから体の輪郭は真ん丸でどっしりさせて描けば、どんなにいい加減に、適当に描いてもトトロっぽくなります」と解説。受講生たちは熱心に耳を傾けていた。