ワールドビジネスサテライト8月21日に放送された、テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』に、ドワンゴの川上量生会長が出演しました。
番組では、川上さんのジブリでのプロデューサー見習いとしての顔もピックアップ。10月から放送予定の『山賊の娘ローニャ』の打ち合わせ風景も放送されました。



ワールドビジネスサテライト

宮崎吾朗監督は、川上さんの仕事ぶりと聞かれ、「(川上さんは)仕事してないですよ。真面目に答えると、人のために働こうとする人。損とか得でものを言わないですよ。思ったことしか言わないので、鈴木敏夫とか宮崎駿に、この人はいい人だと思われている」と評価しています。
ジブリで見習いをしている理由を問われると、「衝動的です。逃げたかったんです、現実から」と川上さん。

主にKADOKAWAとの統合についての話となっていますが、川上さんの話を文字に起こしました。
キャスタの方が、最初から最後まで川上さんを掴みきれず、苦戦しているようでした。

 

ニコニコ動画は儲けることを忘れていた

――ニコニコ動画は凄い盛り上がりですが、始めた当初はここまでの盛り上がりを想像していました?

川上:
まあ、一応、目標としては立ててましたけど、ほんとうになるっていうのは実感湧かなかったですね。

――今は成功しているニコニコ動画ですが、当初は苦労していました。赤字続きだったわけですが、2010年から黒字化していますけども、ここで何があったんですか?

川上:
よく覚えてないですが、夏野さんに来ていただいたんですよね。
いちばん最初、インターネットってほんとうに儲からない環境だなと思って、儲けるのを諦めたんですよ。儲けなくても良いや、と思っていたら、ほんとに儲けるのを忘れてしまって。
例えば、プレミア会員っていう有料会員の制度があるんですけど、そこの入会のリンクを付け忘れていたりとか。なんか会員が増えないと思ったら、そういうことをやってなかったりだとか。あまりに、(儲けることを)やってなかったんですよ。
それが、夏野さんが来て、いろいろ調べていく中で、広告をもっと出したほうが良いんじゃないかと言われて、思い出したようにそういうことをやりだしたら黒字になったと。

――川上さんは、経営側ではあるんですけど、中身の開発のほうで、それ以外の部分は外の人がバックアップして黒字化していったということでしょうか。

川上:
ぼくもビジネスマンなんで、お金儲けもやろうと思ったら出来ると思ってるんですけど、あんまり沢山のことはできないんですよね。あんまり器用なことができないんです。
儲けるときは儲けるし、儲けることを諦めたら、ほんとに諦めちゃうので。誰かほかの人がいないと忘れちゃいますね。

 

川上量生が大モノに好かれるわけ

――川上さんは若い方にも支持されていますし、年上の方からも絶大な信頼を寄せられていると思うのですけど、自己分析をなさって角川さんが川上さんにゾッコンなのは、どうしてだと思います?

川上:
ぼくは基本、相性があるので。それは年齢に関係なく、合う人と合わない人って、分かれてるんですよ。
年上の人が得意かっていうと、そんなこともなくて。あるタイプの年上の人は、すごく仲良くなれるんですけど。べつに全員じゃないですね。

――KADOKAWAとジブリというのを、どういうふうに捉えていますか?

川上:
やっぱり、子どものころから憧れの対象ですよね。どちらとも。

 

みんなが分かるようなことをやっても上手くいかない。
分かんないから上手くいく。

――KADOKAWAと統合して、何をするのか明確なビジョンは見えているものなんですか?

川上:
いや、ないですね。べつに人を食ったような答えをしているわけじゃなくて。KADOKAWAとドワンゴが何をするかって、みんな疑問に思ってるじゃないですか。みんな分かんないんだと思うんですね。ぼくだって分かんないんですよ。だから、それは正しいと思いますね。

――ただ経営統合はしてしまおうと?

川上:
面白いことが出来ると思ってますね。それって実際に、やってみないと分からないじゃないですか。

――分かるようなことは、誰かがもうやってるだろうということですか?

川上:
そうそう、そうです。分かるようなことだったら、たぶん上手くいかないですよ。分かんないから上手くいくんだと思ってるんですね。それは、ほんとうに思ってます。

――星がぶつかると、新しい星が生まれる。だけど、どういう星が生まれるか分からない。

川上:
あー、そうですそうです。来年一年間もドワンゴは、すごい面白いことをやりますけど、「一緒になる必要なかったじゃん」っていことをやると思います。
今から一緒にやることを始めても、来年は無理ですよ。再来年ですよね。

――再来年あたりから、統合の成果が出始める?

川上:
早ければ。

 

競争は、一番やっちゃいけないこと

――統合したあと、「こういうことします」というのが明確にないと、競合の方もどう戦ったらよいか分からないですよね。

川上:
そうだと思いますね。

――それも戦略のひとつですか?

川上:
ひとつといえば、ひとつですよね。やっぱり、分からないと競争のしようがないですから。
競争って、一番やっちゃいけないことだと思ってるんですよ。

――勝負にかされる賞金は作ったってしょうがない、ということですね?

川上:
そうです。

 

達成可能な目標を立てる

――川上さんにとっての成功って、どういうものですか?

川上:
目標を立てるんですよ。成功のルールを自分で決めて。
サラリーマンのとき、最初に企画やったときは、まだペーペーだったんで、ライバルの会社に絶対勝てないと思ったんですね。そのときに、自分の中でルールを決めてやったのは、新サービスの発表をしてライバルの会社に勝つのは無理だから、ビビらせるってのが目標だったんですよ。
それで、発表するじゃないですか。そうするとライバルの会社が一か月後くらいに、似たようなサービスを発表するんですよ。
それで、「(相手が)ビビった。やった、勝った」ってことにして、終わりなんですね。そのときできることで、ルールを決めて、自分が勝ちだと決めちゃうんです。

――プロジェクトで利益が出るとかで、そういうものを成功に据えているわけではない?

川上:
利益を出せるときは、利益を目標にすることもありますよ。
でも、利益が出ないと思ったら、そんな達成できない目標立てたって、ガッカリするだけじゃないですか。

――再来年には、ビビらせる何かが出来るかもしれない?

川上:
べつにビビらせることが目標ではないので(笑)。
新入社員のころは、ビビらせることぐらいしか、ぼくにはできないと思ったんです。自分のベストは、ビビらせることだって。

 

Googleとの戦いはゲリラ戦

――コンテンツを沢山持っている角川と、周りを巻き込みながら世に出していくのが上手いドワンゴが統合すると、どういう化学反応が起こるか楽しみですね。

川上:
いやぁ、うちはそんなに周りを巻き込むのは得意じゃないですよ(笑)。うちは、人付き合いが苦手な人たちばかりで出来ている会社なので。基本は、そういうのが不得意なんですけど、人付き合いが苦手な会社って、助けてくれる人が現れるんですよね。角川さんもそうでしょうし。
今まで、いろんな会社が「この会社まずいよね、このままじゃ」って思ってくれた人がいたんで、そういうふうに見えるだけだと思いますね。

――海外に目を向けると、Googleだとか大きなプラットフォームと言われるネットがありますよね。そういったところと対抗していけるプラットフォームを作っていくわけではない?

川上:
対抗は出来ないと思うんですよね、普通に考えると。普通の方法だと、対抗できないような競争を仕掛けてきてるのが、グローバルプラットフォームだと思うんですね。
そことは、やっぱり同じ方法で対抗したらダメですよね。

――ということは、違う方法?

川上:
はい。当然弱者なわけですから、ある種の誤魔化しみたいなことをやらないと、やっぱり戦えないと思いますよね。

――誤魔化しというのは、どういうことですか?

川上:
混乱させるような。ゲリラ戦ですよね。

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