奥山玲子 ファッションNHKの朝ドラ『なつぞら』の主人公・奥原なつはアニメーターになって、一気に垢ぬけたファッションになりました。
これは、奥原なつのモデルとなった、奥山玲子さんがお洒落だったエピソードに由来したものと思われます。
奥原さんはお洒落で有名な人で、スタジオには毎日色鮮やかなファッションで出勤していたといいます。



元々、奥山さんはファッション関係の仕事に就きたいという想いもあったそうで、服装に対する意識が高かったようです。
洋服の数は、そんなにたくさん持っていたわけじゃないそうですけど、出勤する服装は何かしら毎日変化を加えていたといいます。
自分のその日の気持ちに合う服装にアクセサリーを組み合わせて、いろいろなコーディネートのパターンがあったのだとか。

それを見た大塚康生さんは、あるとき奥山さんが何着の洋服を持っているのか疑問に思い、こっそり観察して服装をスケッチします。
来る日も来る日も奥山さんの服装をスケッチし、机に貼り出していきます。しかし、奥山さんは毎日何かしら変化があるため、スケッチが終わりません。
とうとう大塚さんは音を上げて、スケッチをやめてしまいます。そして、そのスケッチは、角田紘一さんが引き継いで粘り強く記録を続けていくことになるのです。

奥山玲子 ファッション

後に、角田さんはこのスケッチについて、このように語っています。
「すぐやめようと思ったが、際限がなく着替えてくるのでやめられなくなって、こうなったら、持っている服を全部持ち出すまで描いてやる! と決心して、朝は必ず5~6分スケッチしました。だんだん同トレスが増えて、ざまぁみろ、これでやめられると思ったら、また初めて見る新しいのを着てくるもんだから、くたびれちゃってね、参ったよ」

同トレスというのはアニメーション制作用語で、同じ絵を使うときに色鉛筆でなぞることを言います。
この同トレスが数日続くことはあっても、またすぐに新しい洋服を着てくる奥山さん。角田さんも終わりが見えてこなくなり、ついに音を上げてしまいました。

奥山玲子 ファッション

このスケッチは『大塚康生のおもちゃ箱』という本に収録されていて、そこに収められている絵だけでも、1966年2月2日から1967年7月19日まで描かれています。

奥山さんはこの当時、自分が毎朝スケッチの対象になっていることに気付いていなかったようで、後にこのスケッチを見て「あれぇ~、初めて見た! そう言えば、あの頃の角やんがよくこっちを変な目つきで見ていたわねぇ」と話しています。

ドラマ『なつぞら』でも、もしかしたら毎朝なつのことをスケッチしているアニメーターがいるかもしれませんね。

※追記 2019/06/12
『なつぞら』第63話で、大塚康生さんをモデルにした下山克己が、なつと森田桃代をスケッチしているエピソードが放送されました。