『風立ちぬ』カストルプ リヒャルト・ゾルゲ

『風立ちぬ』に登場する謎の人物カストルプ。映画の中で、堀越二郎は彼と接するようになってから、特高から目をつけられるようになります。
重要人物であることはわかりますが、何者なのか明かされることはなく謎の人物として描かれています。いったい彼は日本で何をしていたのでしょうか。



まず、カストルプには3人のモデルがいます。
キャラクター造形のモデルと、名前のモデル、スパイとしてのモデルが存在します。

ジブリに勤めていたスティーブン・アルパート

まず一人目は、見た目のモデル。以前にも記事にしましたがスタジオジブリの海外事業部に勤めていたスティーブン・アルパートさん。彼に恩義を感じていた宮崎駿監督は、キャラクターの絵としてアルパートさんをモデルにしました。声優もアルパートさん自身が務めています。

小説『魔の山』のハンス・カストルプ

二人目は、名前のモデル。トーマス・マンの小説『魔の山』に登場するハンス・カストルプ。作品は、青年のカストルプが、第一次世界大戦前にスイスのアルプス山脈にある結核の養成所サナトリウムに従兄弟ヨーアヒムを訪れることから始まります。そこでカストルプは結核にかかっていることがわかったため、その後7年にわたってそこに滞在することになり、ゲーテの「メフィストフェレス」の如き人物によって、知識や学問を経由し、生に目覚めていくという物語。「カストルプ」の名前は、ここから引用されています。キャラクター設定において参考にされているかどうかはわかりません。

ソ連のスパイ、リヒャルト・ゾルゲ

そして三人目は、スパイとしてのモデル。ソ連に実在したリヒャルト・ゾルゲというスパイがモデルになっています。つまり、映画に登場するカストルプは日本でスパイ活動を行なっているわけです。

実際のゾルゲは、1933年(昭和8年)から1941年(昭和16年)にかけてゾルゲ諜報団を組織して日本で諜報活動を行い、ドイツと日本の対ソ参戦の可能性などの調査を行ないました。
その後、ゾルゲは1942年に国防保安法、治安維持法違反などにより起訴され、死刑判決が言い渡されました。日独両国の敗色が濃厚となってきた1944年11月7日のロシア革命記念日に、巣鴨拘置所にて死刑が執行されています。
ゾルゲの最後の言葉は、日本語で「これは私の最後の言葉です。ソビエト赤軍、国際共産主義万歳」だったそうです。

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