鈴木敏夫NHKで放送されたドキュメンタリー「終わらない人 宮崎駿」の中で、宮崎駿監督が長編の企画を立ち上げたことが話題となっていますが、宮崎監督はことあるごとに長編企画を持ち出しているそうです。
宮崎駿監督が長編からの引退宣言をし、鈴木さんもほっと一段落と思ったら、長編企画が立ち上がり、落ち着く暇がありません。



今回のドキュメンタリーで明かされた長編企画だけではなくて、これまでにも宮崎監督は、何度となく長編企画を口にしているそうです。

しかし、鈴木さんは、お金集めだとか、宣伝作業にもう疲れてしまっているごようす。

鈴木さんのこれまでの発言をさかのぼってみると、お金集めや宣伝に、予算回収といった面倒くさい作業は、もうしたくないという気持ちが溢れております。

「ジブリ汗まみれ」のインタビューでは、今後映画を作る場合は、宣伝をせずに世の中に出していきたいと語っています。

さらには、昨年11月に行なわれた、ショートショートフィルムフェスティバルの講演会では、お金集めが面倒になった鈴木さんは、100億円の寄付を募るという、思い切った発言をしています。出資者は現れるのでしょうか……。

宮崎監督の長編が、どのように作られるのか定かではありませんけども、クラウドファンディングを使ってみるのも、ひとつの手段ではないかと思います。はてさて、長編企画の行方や如何に。

宣伝なんかしないで、世の中に出してどうなるか見てみたい。

鈴木:
つい先日も、ぼくは宮崎駿と話したんですよ。もし、次作るなら、「ぼくは、宣伝なんかやらないですからね」って。何にも宣伝なんかしないで、世の中に出してどうなるか。そういう映画をやってみたい、って。そうしたら、宮崎駿が「あ、わかるよ。鈴木さんが今腰が悪いのは、そういうことをやってきたからだよ」って。「だって、宮さんだって、そうでしょう?」って。仮に、宮さんが何かやるってときに、今までだったら、いろんなところが出資してくれる。そしたら、当然お客さんの方を向いて、サービスを考えなければいけない。「そういうの無しで作ったら良いですよね」って。その前の条件としては、ほんとうに自分たちのお金でやるしかない。それしかない。それだったら、途中でやめたって良いんだから。途中で死んじゃうこともあるし。そういう話をしたばっかなんです。「それも面白いかもしれないですね」なんて言って。

100億円の自主制作映画。ちょっと、ワクワクする。

鈴木:
宮崎駿って人は、皆さんご存知のように今から3年前、引退宣言っていうのをしたんですよ。それで、彼はそのとき、こういう言い方をしたんですよ。「長編映画からの引退である」って。ぼく、正確に言うと、「商業映画からの引退」だと思ったんですよね。
彼と、いろいろ話してると、短編の企画も話し合ってるんですけど、突然長編の企画が出てきたりするんですよね。ぼくなんか、「この人、何考えてんだろう?」って思ったりもするんですよ。思うんだけれど、ある日、思いついたんですよ。宮崎駿って75歳で、今長編のこういうのをやったらどうかってやっていて、ふと思いついたんですよ。誰か、100億円くらい出してくれないかな、って。これ、どういうことかって言うとね、パトロンですよ。それで、その人のために作る。100億円の自主映画。ちょっと、ワクワクしたんですよ。

――ワクワクするんですね(笑)。

鈴木:
だって、商業映画作って、お客さんが入ったとか、入らないとか、もういいですよ。100億円の自主映画っていいでしょう? そういうのが、ほんとうに出来たら、それから、そういう人が出てきたら、それは夢じゃないですか。

――100億円を使って、自分たちが作りたいもの、その人のために作るもの、それが出来上がって、後々の後世にとったら素晴らしいものが……。

鈴木:
ぼくね、ついでにこういうことも思ってるんですよ。宮崎駿って人は、今75歳で。ついこないだ、長兄のお兄さんが、亡くなったんですよ。で、77歳。いつ、宮崎駿も死んじゃうかわからない。
そうすると、100億円出して作り始めるでしょう。途中で、死んじゃうってことがあるわけですよ。そうすると、パトロンだったら、諦めがきくでしょう。

――そうですね、もう死んじゃったならって……。

鈴木:
誰かが跡を継いで、作りたいとか、いろいろあるかもしれないけれど。ぼくね、どこかで思ってるんですよ。その出した100億円は、何があっても驚かないと。だって、本来、映画ってやり始めたら、出来ないってこともあるわけですよ。それが、映画ですよ。お金を出せば作れる、自動販売機じゃないんだから、って。
そういうことで言うと、作り始めたけれど、諸般の事情によって出来ない。それは、やっぱり企画が間違っていたとか、本人が病気になっちゃったとか、死んじゃったとか、いろんな事情が出てきますよ。でも、そういうことに対して、お金を提供してくれる人がいるっていうのが、やっぱり夢ですよね。ほんとうに。

――現代では、なかなかいないと?

鈴木:
どっかにいるんじゃないかなって。こうやって、いろんなところで喋ってると、「じゃあ、ぼくが出しましょう」っていうね(笑)。

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