5 月21日に『夢と狂気の王国』のDVD&Blu-rayが発売されることに合わせて、砂田麻美監督のインタビューが、テレビドガッチにて公開されています。
制作秘話や、本編に加えて映像特典も満載のDVD&Blu-rayの見どころについて、砂田監督が語っています。



――DVD&Blu-rayが、いよいよリリースされます。

一作目(「エンディングノート」)の時はレンタルをしなかったので、今回初めてセルもレンタルも出ることになったんですね。この前TSUTAYAで、何の心構えもなくジブリコーナーに行ったら、“ジブリにしのびこんだマミちゃんの冒険”(※本作ポスターのキャッチコピー)って書いてあって動揺しました(笑)。これまでレンタル店で自分の名前を見たことがなかったので、デビューした監督はみんな必ず通る道ですけど、驚きました。ちなみに今回のDVD&Blu-rayは日本語字幕が入っていますが、やはり宮崎駿監督たちの会話は緻密で面白いので、文字にして見るとまた新たな発見がありますので、ぜひオンにして見ていただきたいです。

――制作に至るきっかけと過程を教えていただけますか?

最初はDVD&Blu-rayパッケージ製品用に、何かドキュメンタリーを撮れないかというお話からスタートしたんですね。そこで鈴木さんと、具体的にどういったことができるのかというお話をしていく中で、「風立ちぬ」が完成するまでの1年間は、私自身も100%の覚悟で向き合わないと撮れないなと思いました。その覚悟を伝えるためのキーワードとして「ドキュメンタリーというよりも、映画として作りたい」と真っすぐに伝えたところ、鈴木さんのリアクションが大きく動いて、企画が一気に進み始めました。

(略)

――撮り方など、鈴木さんと事前にお話したことはありましたか?

鈴木さんは一度「いいよ」と門を開けたら、その後はもう全部自由に、あなたが考えなさいという感じでした。手取り足取り指示があるってわけじゃなくて、こちらから提案していかなければなりません。最初はどこにいたらいいか分からなかったんですが、(本作プロデューサーの)川上量生さんのデスクを貸していただいて。机にかじり付いて、一日中ジブリについて勉強している日もありましたね。カメラも回さないで(笑)。でもそんな私に誰も何もツッコミを入れないで、みなさんが温かく見守ってくださいました。

――ドワンゴの会長でありながら、ジブリのプロデューサー見習いでもある川上さんが本作のプロデューサーを務めています。制作過程でどんなお話を?

川上さんはずっと前からジブリにいらっしゃいますが、スタジオの中の人ではないという意味では私と同じ立場ともいえます。川上さんも、自分の会社がありながらジブリに通っている。そうすると、話をしたというか……ジブリというものに対して、何とも言葉で形容し難い、優しい気持ちになる瞬間を分かち合える部分がありましたね。そういった感覚や、川上さんが鈴木さんのもとで働きたいと思った気持ちが共有できていたんだと思います。なので、映画の撮り方には色々な種類がありますけど、川上さんは私の方針に最初から賛同してくれて、大きな軌道修正をすることなく進めていけました。

――本作を見させていただくと、カメラを構える位置が低かったのが印象的でした。

勘違いされやすいんですけど、私はカメラを人に向けるのが苦手なんですよ。あまり回したくないと思ってしまうこともあります。例えば、被写体が3人で歩いている時は前に回り込むのが普通なんですけど、私の場合、後ろ姿を追いながら撮ってしまうことが多いです。回り込むことによって、その3人の関係性にあるリアルな部分を崩してしまうこともあると思うんですね。また、インタビューする時は、被写体の背景にある余計なものを排除したりすることが多いんですけど、それも今回はやっていません。直接的に会話には関係なくても、普段そこにある物を動かすことによって、被写体となる人がザワザワしたものを感じてしまうことがあるので。

同じように、そのカメラの低さというのも、相手が座っていたら自分も座るということです。あとは、私のクセでカメラの持ち方が低いんですね。実はこのことは鈴木さんにもご指摘いただいたことなんです。「君のカメラの位置は低いねえ」と仰って、ある時期それが鈴木さんの中で凄く気になる時期があったようで、よくこの映画におけるカメラの高低についてお話されていました。

(略)

――通い続けて1年、振り返ってどんな日々でしたか?

やはり、ジブリというものに完全に片想い状態ですよね。向こうはこっちを見ていないですから、私だけが向こうをじっと見ている時間がずっと続くわけで。当然、もどかしい時間もありました。昨日と今日が何も変わらないという日がほとんどですから。時々、向こうがこっちを振り向いてくれた瞬間、それは要するに映画的な瞬間に立ち会えたりすると、もういい年なのにスキップして帰りたくなるくらい心弾む時もありました(笑)。強烈な片思いの日々でしたね。

(略)

――映画の終盤で、宮崎駿監督が引退会見に臨む直前の様子を捉えた貴重なシーンがあります。高い所から街を眺めながら宮崎監督が発した言葉、そこに宮崎アニメのダイジェストが重なっていました。このシーンはどんな意図で作られたのでしょうか?

引退会見直前にあの言葉を投げかけられた時、宮崎監督は、過去と未来、両方の話をしているという風に思ったんです。会見直前のこのシーンで街を眺めながら話した言葉、その内容そのものが「宮崎駿の作品」なんですね。けれど、終わりに向かって準備をしているはずの宮崎監督が、これから自分が作りたいと思っている映画の話をしているようでもある。と同時に私たちは、その映像をもう新たに見られないことも知っている。宮崎監督ご自身が矛盾をはらんでいる存在だと言われることがありますけど、まさにそれを表している場面でした。なので、このシーンはラストに入れようと思いました。

――DVD&Blu-rayの映像特典に入っている、「風立ちぬ」制作中の宮崎監督が語った「いつか作ってみたい映画」にも繋がると……。

そうですね。でも、その「宮崎駿監督がいつか作ってみたい映画」は、説明を聞いてもどういう映画なのか、さっぱりわからないんですよ(笑)。でもそのわからなさが、やはり宮崎監督なんですね。ジブリファンの皆さんなら、きっとこのわからなさ加減がわかってもらえると思います。そして、宮崎監督の中に無数の想像が膨らんでいるんだろうな、ということも同時にわかるんですよね。だから、「ああ、もう観ることができないんだ」という気持ちと、「いったいどんな映画を作りたいと思っていたんだろう」という気持ち、両方を感じるんじゃないかなと。すごく短いシーンではあるんですけど、注目してみてください。

――では最後に、この作品をこれから観る方に向けてメッセージをお願いします!

一度でも訪れたことがある人はみんな、ジブリをとても不思議な場所、空間だと言うんですね。その不思議さというのは、一体何に由来していて、一体どういう景色をしているものなのか。そこに横たわる世界を出来るだけ忠実に描きたいと思っていました。全ての人がスタジオジブリの見学をすることはできないですけど、二時間だけの疑似体験として、ジブリに足を踏み入れた感覚になっていただければ嬉しいです。

 

『夢と狂気の王国』Blu-ray
本編約118分/片面2層 /MPEG-4 AVC/16:9/日本語字幕/英語字幕
日本語(DTS-HD MasterAudio 5.1ch) VWBS1528
特典映像:未公開映像集 ウシコは見た! “ちょっと”夢と狂気の王国(約32分)/ダイジェストショートフィルム(約2分)/劇場予告編
価格:6,264円
≫Amazonで詳細を見る ≫楽天で詳細を見る

『夢と狂気の王国 』DVD
本編約118分/片面2層/16:9/日本語字幕/英語字幕
日本語 (ドルビーデジタル5.1ch) VWDZ8162
特典映像:未公開映像集 ウシコは見た! “ちょっと”夢と狂気の王国(約32分)/ダイジェストショートフィルム(約2分)/劇場予告編
価格:5,076円
≫Amazonで詳細を見る ≫楽天で詳細を見る


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