先日、企画展示「彫刻刀が刻む戦後日本 2つの民衆版画運動」を観てきました。
町田市立国際版画美術館にて、4月23日(土)から7月3日(日)まで開催されています。
本展では、戦後日本で展開した2つの民衆版画運動が紹介されています。
版画を通して社会運動を伝えた「戦後版画運動」や、全国の小中学校の教員が学校教育のなかへ版画を広めた「教育版画運動」の作品の数々が展示されました。
その、作品の一つとして、『魔女の宅急便』でウルスラが描いた絵の元ネタとなった版画が展示されたので、この機会を逃すまいと観に行ってきました。
劇中、ウルスラが描いていたあの幻想的な絵画は、青森県八戸市立湊中学校養護学級生徒たちが、坂本小九郎先生の指導によって作った版画がベースとなっています。
本作は連作になっていて、全8作ある『虹の上をとぶ船』シリーズのひとつ、『天馬が牛と鳥が夜空をかけていく』が採用されました。
ジブリ美術館にレプリカが展示されているので、ご存知の方も多いかもしれません。
この作品が使われることになったのは、教育者であり版画家の大田耕士さんが関係しています。
大田耕士さんというのは、宮崎駿監督の奥さま・朱美さんの実の父親。つまり、宮崎監督からみたら、義父にあたります。
宮崎監督は、耕士さんの教育活動に参加していた縁もあって、この作品と巡りあい、映画に起用することを決めたようです。
映画に登場したものは、一度版画を撮影して、そこに宮崎監督がキキの顔を補筆し、そこからさらに美術の男鹿和雄さんが油絵のタッチで仕上げました。
元絵の版画の素晴らしさもさることながら、男鹿さんの技術とセンスの際立った一枚となりました。
映画に登場したウルスラの絵は、巨大なキャンバスに描かれたものでしたが、実はこの元絵の版画も 1820×900㎜ という大サイズです。
そして、『虹の上をとぶ船』シリーズの8作が、壁一面に並んでいるので、とても迫力があります。
そのすべてが幻想的な作風で、ほかにも『魔女の宅急便』に起用できそうな作品もありました。
写真は載せませんが、タイトルは『大鳥に乗って星空を飛ぶこどもたち』という作品です。
実は、これまで気づかなかったんですが、この作品のレプリカも既にジブリ美術館に展示されていました。
過去のガイドブックを見返してみたら、開館初期から飾ってあったようです。
実際に宮崎監督も、どちらを起用するか迷っていたのかもしれないですね。
今回の展示は、7月3日まで町田市立国際版画美術館で開催されています。
この機会を逃したら、いつ現物を拝めるかわかりません。興味のある方は、ぜひ。
美術館の公式サイトには、入場券の割引情報なんかもありますよ!
彫刻刀が刻む戦後日本 2つの民衆版画運動
会期:2022年4月23日(土)~7月3日(日)
時間:平日10:00~17:00、土日祝10:00~17:30(入場は閉館30分前まで)
場所:町田市立国際版画美術館
休館:月曜日