宮崎駿監督の最大のヒット作品『千と千尋の神隠し』。本作に登場した印象深いキャラクターといえば、湯婆婆がいます。そして、その姉に、まったく同じ姿形をした双子の銭婆がいます。
なぜこの姉妹は、双子という設定になったのでしょうか。物語の上では、双子である必要性はありません。むしろ、まったく別の姿の婆がいたほうが、わかりやすさがあったかもしれません。
しかし、そこには、せっぱくしたスケジュールと、キャラクターデザインの問題が関係していました。LINELIVEで交わされた、対談で、双子になった理由が明かされています。
上手くいかないから双子にしよう
鈴木:
『千と千尋』のときだって覚えてない? 散々っぱら千尋の話、どういう子なのか延々と喋ってたじゃない。それが、冒頭の5分で終っちゃうんだもん。
石井:
湯婆婆のあとに、二人くらい強い婆がいましたもんね、最初。それと戦う話だったんですよ。
鈴木:
銭婆って出てくるじゃない。知ってる? 宮さんが一所懸命キャラクター描いてたの。内緒でキャラクター描いてて、上手くいかないっていうの覚えてる?
石井:
覚えてます、覚えてます。
鈴木:
それで、どうしたか知ってる? 上手くいかないから双子にしようって(笑)。ここが、宮さんの凄いところなのよ。
川上:
キャラクターが作れなかったんですね。作れなかったから双子になった。
鈴木:
あれ、凄いですよね。だって、できないもん、そんなこと。
押井:
ああいう思考回路って、どうなってんだろう。
鈴木:
わかんない。パッとつじつま合わせるよね。
湯婆婆と銭婆は二人で一人
ちなみに、この双子という設定には、本作で作画監督を務めた安藤雅司さんの意見も反映されたようです。事の経緯は、『THE ART OF Spirited Away』のなかで明かされています。
初期デザインでは、湯婆婆よりも背が高く、スレンダーなイメージで描かれていた銭婆ですが、物語の後半から出てくるということから、新キャラを説明する時間もないため、安藤さんは「湯婆婆と同じでいいんじゃないですか」と提案。当初、指輪の数で分類しようという案もあったようですが、ややこしくなることから、まるっきり同じデザインとなりました。
そして、湯婆婆と銭婆は二人で一人という考え方をすることによって、双子という設定が成立しました。
『THE ART OF Spirited Away』 『千と千尋の神隠し』のために描かれたイメージボード、美術ボード、背景、デジタルデータ、キャラクター設定を紹介。 |