近藤喜文監督が手がけた、最初で最後の長編アニメーション映画、『耳をすませば』の豆知識をまとめました。
本作は、近藤喜文監督の才能を世に知らしめるため、宮崎駿が製作プロデューサーとなり、シナリオ・絵コンテを担当しています。
『平成狸合戦ぽんぽこ』のエンディングと、『耳をすませば』のオープニングは繋がっている。
どちらの作品も、多摩の開発地区(多摩ニュータウン)を舞台にしており、公開された時期も『ぽんぽこ』が1994年で、『耳をすませば』が1995年と近い。
上が『ぽんぽこ』で、下が『耳をすませば』の夜景。
イントロを重視し、オリビア・ニュートン・ジョンの曲が流された。
オープニングで、ジョン・デンバーの原曲を使用せずに、オリビア・ニュートン・ジョンが歌う「カントリー・ロード」を流すことに決めたのは、イントロが映像と合うということが決め手になっている。
『耳をすませば』は、近藤喜文の才能を発揮させるために、宮崎駿が企画したもの
近藤喜文の才能を最も評価していた宮崎駿は、ジブリ設立当初から近藤喜文と一緒に仕事をすることを望んでいた。
「近藤喜文ここにありという仕事をさせたかった」と後に語っている。
保健室の高坂先生は、『魔女の宅急便』でキキとウルスラの声優を務めた高山みなみが演じている。
どちらかというと、ウルスラに近い声で演じているでしょうか。
天沢聖司は声変わり直前だった。
作品のキャラクター設定ではなくて、声優を務めた高橋一生さんは、「ちょうど、この1週間後くらいにですね、僕、声がガラガラし始めて。2週間後ぐらいにもう、この(現在の)声になってました。本当にギリギリだったんです」と声変わり直前に収録したことを語っています。
ムーンは、原作では黒猫として描かれている。
原作では、黒猫のムーンとルナの2匹が登場している。
映画で、2匹が1匹になったのは物語を整理するためで、ブタ猫に変更されたのは黒猫だと『魔女の宅急便』のイメージが強いため。
雫が、学校の図書室で本を探しているシーンの本棚には「TOTORO」がある。
本の厚みからいって、アート集かもしれません。
『耳をすませば』の世界には、「コアラのマーチ」ならぬ「ラッコのマーチ」がある。
コアラのマーチと違ってチョコは入っておらず、ビスケットかポテトチップのようなお菓子のようです。
モデル地、聖蹟桜ヶ丘を印象づけた宮崎駿の手法。
宮崎駿は、絵コンテ・ストーリーボードを描く際、意図的に同じ背景を最低3回出しており、街を印象付ける手法をとっている。モデル地の聖蹟桜ヶ丘が、現在に至るまで人気となっている裏には、宮崎駿による仕掛けがありました。
『耳をすませば』のモデル地 「聖蹟桜ヶ丘」を印象づけた 宮崎駿の手法
『海がきこえる』の武藤里伽子と杜崎拓が出演している。
雫が電車に乗る「向原駅」のホームには、『海がきこえる』の武藤里伽子と杜崎拓がいる。里伽子は、まだ制服を着ているので、高校生のようです。どういったシチュエーションでしょうか。
地球屋には、「Porco Rosso(ポルコ・ロッソ)」と書かれた時計がある。
ポルコは、後に時計職人にでもなったのでしょうか。「届かぬ恋」をしていた時計職人の正体は果たして……。
牢獄でヴァイオリンを作っている少年の絵は、宮崎駿監督の次男の宮崎敬介さんが描いた版画が使われている。
宮崎敬介さんは木口木版画として活動しており、ジブリ美術館の展示用に木口木版画を制作したこともある。
天沢聖司が図書館で読んでいる本は、『千と千尋の神隠し』の元ネタになった児童書『霧のむこうのふしぎな街』
ジブリのスタッフさんが、よく読んでいたと言われてる本なので、このシーンを担当していた方が読んでいたんでしょうか。
雫が図書館から帰る電車の車窓から、一瞬だけ「耳をすませば」という看板が見える
バロンを制作するシーンで、中トトロと小トトロとジジの置物が映っている。
井上直久さんの『イバラード』の世界にまぎれて、ジブリのちびトトロとジジがお邪魔しています。
雫が、両親と進学について話し合っているシーンで、カットが変わると背景が変化している。
台所に置いてある洗剤やビンの位置が変わっています。
ラストの朝日が昇るシーンは、読売ランドから見える景色を参考にしている。
美術監督の黒田聡さんは、男鹿和雄さんと一緒に朝まで飲んでいて、その足で読売ランドまでロケハンに向かったことを語っている。
『耳をすませば』ラストシーンの朝日は「よみうりランド」から見た景色がモデル
主題歌「カントリー・ロード」は鈴木敏夫の娘が作詞している
当初、宮崎駿が作詞をする予定だったが、書くことができなかったため、当時雫と同年代だった鈴木敏夫の娘に依頼がいくことになった。
『耳をすませば』の主題歌「カントリー・ロード」を作詞したのは、鈴木敏夫の娘
『耳をすませば』と『もののけ姫』は、同じ思想で作られている。
本作でシナリオを担当した宮崎駿監督は、『耳をすませば』で触れなかったことを、『もののけ姫』の中で描いた、対になる作品と語っている。
映画『耳をすませば』より 「バロンのくれた物語」の物語 映画『耳をすませば』の劇中劇「バロンのくれた物語」のシークエンスとプロセスを紹介。 |