米林宏昌監督の『思い出のマーニー』。本作は、スタジオジブリとしては初のWヒロインの作品で、主人公のひとりマーニーがポスタービジュアルとなっています。
このネグリジェ姿のマーニーは、米林宏昌監督が描いたものです。
実は、この絵に触発されて、宮崎駿監督が描いた絵があるのをご存知でしょうか。
『思い出のマーニー』は、基本的に宮崎監督はノータッチで進められた作品ですが、そこは宮崎監督、時おり口を挟みたくなってしまうようです。
制作は順調に進み、スタジオ中にポスターが貼られているのを見るや、宮崎監督は「麻呂は、美少女ばかり描いている。しかも、金髪の……」と嘆き、「いまどき、金髪の女の子で、お客さんの気を引こうなんて古い!」と批判し、それは西洋に対する日本人のコンプレックスだとも指摘していたのです。
ご存知のとおり『思い出のマーニー』は、ジョージ・G・ロビンソンの小説が原作で、作中にも「美しい金色の髪」という記述があるため、気を引くために金髪にしたわけではないと思うのですが、そこは宮崎監督、そんなことは関係ありません。
米林監督の絵に触発された宮崎監督は、対抗して一枚の絵を描きました。
それは何かというと、その当時、ジブリ美術館の企画展として準備していた、『クルミわり人形とネズミの王さま展』のポスターです。
一見、何の関係も無さそうに思えますが、マーニーと同じ年頃の女の子で、ネグリジェ姿。同じモチーフで描かれています。
宮崎監督が描いたのは、快活そうな女の子。対する、米林監督が描いたのは艶っぽく、どこか色気のあるマーニー。これまでのジブリ作品には、いなかったようなキャラクターです。宮崎監督の想定を飛び出したこの絵は、自分だったらこう描くぞ、と対抗心を抱かせていたのです。