君たちはどう生きるか

今回は『君たちはどう生きるか』の声優についてのエピソードをご紹介します。
本作の声優キャストは、スタジオジブリ作品としては異例の未発表という形で公開されました。



豪華俳優陣が揃ってはいたのですが、映画の公開前には声優情報を含め、一切内容が明かされませんでした。
事前プロモーションも行わないという独特な戦略がとられたため、エンドロールで初めてキャストが判明し、公開後にそのラインナップが大きな話題となりました。

本作の主要キャストは以下のとおり。

『君たちはどう生きるか』キャスト

牧眞人:山時聡真
青サギ・サギ男:菅田将暉
キリコ(若い):柴咲コウ
ヒミ:あいみょん
夏子:木村佳乃
勝一:木村拓哉
大伯父:火野正平
インコ大王:國村隼
老ペリカン:小林薫
ワラワラ:滝沢カレン
あいこ:大竹しのぶ
いずみ:竹下景子
うたこ:風吹ジュン
えりこ:阿川佐和子
キリコ(老婆):柴咲コウ

これら豪華俳優陣のキャスティングは、鈴木敏夫プロデューサーによって選ばれました。
宮﨑駿監督は、現在の俳優をほとんど知らないということから、鈴木さん選定のもとオーディションが行われ、決定したといいます。

眞人/山時聡真

山時さんはオーディションの際に、とある本編の映像に声を当てたそうですが、それが何の作品かは聞かされていなかったそうです。
役柄の背景もわからずに行ったそうですが、大きなオーディションに参加しているという、緊張感はあったといいます。
自身の手ごたえは無くて、上手くできなかったという思いがあったそう。しかし、自己評価とは裏腹に合格します。

合格となれば、通常であれば本番に備えて徹底的に役柄を飲み込み、練習したくなるものですが、山時さんに与えられた指示は「本番まで練習をしないで」というものでした。
これは、スタジオジブリが常々言っている、自然な演技を求める為と思われます。収録時の宮﨑監督からの指示は、「自由にやっていいよ」の一言だけだったそうです。なんとも、ジブリらしいエピソードです。

ヒミ/あいみょん

ヒミの声があいみょんに決まった経緯は、2021年の年末に行われた「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」のラジオ収録まで遡ります。
以前からジブリファンだったあいみょんは、鈴木さんとの対談を願い、ラジオに出演。そこで、いつかジブリ作品の声優をやってみたい、と申し出ます。
そしてその翌年、実際にオーディションの誘いが来たことから実現しました。

これまでの宮﨑作品のヒロインは女性っぽい声が多かったので、鈴木さんは新鮮味を求めて、サバサバした喋り方のあいみょんを提案しました。
しかし、鈴木さんは、宮﨑監督に嫌がられるのではないかと心配だったそうですが、あいみょんは見事合格。アフレコ初日から、あいみょんの最初の台詞を聴いたときに、宮﨑監督は頷いて「よし」というポーズをとっていたそうです。

あいみょんは、「普段のレコーディングの700倍緊張した」と語っています。

勝一/木村拓哉

鈴木さんが声優キャストで一番最初に決めたことは、父親の勝一役は木村拓哉さんでいくということ。
木村さんといえば、『ハウルの動く城』でハウルの声も担当しています。『ハウル』のときは、木村さんサイドからジブリ作品の声優を申し出たことから採用されましたが、今回は鈴木さんの「この人しかいない」という、強い要望のもと決定しました。
その理由というのが、ハウルが中年になり父親になったらこうなるのではないかという、ハウルが歳をとったイメージが勝一にあったそうです。
というのも、勝一というキャラクターは宮﨑駿監督の父親が投影されていて、自分本位などこか勝手なところがある父親と、監督は捉えていたそうです。

収録前は、木村さんが演じることにどこか懐疑的な部分もあったという宮崎監督ですが、アフレコの第一声をきいて「ああ、これは本当にいい」と気に入って、アフレコがすべて終わったときには「父のことを思い出しました」と声をかけたそうです。

宮﨑駿と青サギと…
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