君たちはどう生きるか

眞人が青サギに導かれて下の世界に引きずり込まれ、冒険の第一歩として現れる黄金の門。金色に輝く荘厳なデザインで、複雑な彫刻や模様が施された巨大な構造物として登場します。

この門はいったい、何を意味しているのでしょうか。



塔の内部は、時間や空間が歪んだ幻想的な世界で、黄金の門は神秘的でもあるし、威圧的でもある。
そして上部には、「ワレヲ学ブ者ハ死ス」と書かれています。

これが意味することは何なのでしょうか。作中では、この門についての説明は一切ありません。

ただ、この黄金の門は、ロダンの「地獄の門」が参考にされていると思われます。
この映画自体が、ダンテの『神曲』の影響を受けたストーリーということもありますが、プロデューサーの鈴木敏夫さんは黄金の門について、「本物が上野にある」と言っていたことから、「地獄の門」が参考にされたことは間違いないでしょう。
それが意図して参考にされたかどうかはわかりません。宮﨑監督の美術知識による無意識の反映という可能性もあります。

君たちはどう生きるか

そして、黄金の門に書かれた警句、「ワレヲ学ブ者ハ死ス」は何なのか。
地獄の門にある「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」とも違います。

しかし、黄金の門とすこし似た言葉で、「我に似せる者は生き、我を象る者は死す」というものがあります。中国の芸術家・斉白石の言葉です。
原訳では「似我者生 象我者死」で、日本語の現代語にすると「師の教えを守りながらも創造を加える者は成長して、ただ真似するだけの者は消えていく」となります。

君たちはどう生きるか

本作で描かれた「塔」が「スタジオジブリ」の比喩だとすると、黄金の門はジブリの入口と解釈することもできます。
宮﨑監督が、斉白石から着想を得たかどうかはわかりませんが、「ただ俺の真似をしているだけだと、スタジオジブリは滅ぶぞ」と警鐘を鳴らしているようにも思えます。

宮﨑駿と青サギと…
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