『となりのトトロ』制作時、絵コンテを描く宮崎駿監督は、現在とは違うトトロの登場シーンを描いていました。
映画化されたものは、物語の中盤にメイがトトロの巣に転がり込んで、お腹の上に乗っかって、トトロは大あくびをするという、一連のシーンがありますよね。
完成されたものを観れば、こういうもの、と思ってしまいますが、当初はまったく違う登場シーンが描かれていました。
それは、物語の冒頭からトトロが登場し、庭でサツキとメイと一緒になって動き回るというものだそうです。
きっと、『パンダコパンダ』の展開と近かったんじゃないでしょうか。ところが、この絵コンテを見た鈴木敏夫さんは、異を唱えます。
宮崎駿監督はサービス精神が旺盛なため、観客を喜ばせるための絵コンテを描くけれど、鈴木さんはいくらなんでもこの展開は違う、と思ったそうです。話し合いの結果、サービス精神を抑えたうえで、トトロの登場は現在の形になりました。
もし、鈴木さんの助言を受けずに作っていたら、どのような作品になっていたのか、それも気になりますね。
ちなみに、この一連の出来事を知ってか知らずか、宮崎駿監督の旧知の仲である押井守監督は、『となりのトトロ』をこのように語っています。
トトロをすぐ登場させなきゃいけない
押井:
僕は珍しく『トトロ』は劇場で観たんだけど、子供たちはその辺を走り回っていた。なぜだと思う? トトロが出てくるのが遅いからだよ。それまで退屈なんでみんな通路で遊んでるわけ。子供を楽しませたいなら、すぐにトトロを登場させなきゃいけないのに、もったいぶってそうしないでしょ? しかも、出てきてもイビキかいて寝てるだけで何もしない。じゃあ、子供たちはメイに共感するかというとそうでもない。彼女を「かわいい」なんて言うのはもっと年上の、それこそおばさんとかおばあさんだよ。
トトロの登場が中盤になったことで、子供向けから大人向けになったと分析しているようです。
物語冒頭で登場する『となりのトトロ』も観てみたかったですね。
誰も語らなかったジブリを語ろう スタジオジブリの劇場公開作21本。そして「これまでのジブリ、これからのアニメーション」まで押井守が語り尽くす。 |