千と千尋の神隠し

宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』に関する、Twitterユーザーの投稿が話題となっています。
それは、『千と千尋』の冒頭シーン、繁華街で千尋の父親は何を食べているのか、なぜ両親は豚になってしまったのか、疑問を抱きスタジオジブリへ手紙で質問をしたら、返事が返ってきたというもの。



投稿者は、スタジオジブリへ手紙を送ったことを明かしたうえで、スタジオジブリから返ってきた返事の手紙の写真を掲載。そこには、「お手紙読ませて頂きました。ご質問についてお答えします」と始まり、千尋のお父さんが食べている不思議な食べ物と、豚になった千尋の両親に対する回答が書かれていました。
この手紙は、映画公開されて間もない頃か、DVD発売直後に書かれたものとのこと。

(1)千尋のお父さんが食べている不思議な食べ物
 特に明らかにされていないので、異界の不思議な、しかも“すごくおいしそうな”食べ物ということぐらいしか言えません。鶏肉のようにも見えますが、お母さんが「骨まで柔らかいよ」と言っているので、鶏だとしたらまるごと食べるのは無理です。
湯婆婆によると「お客様の食べ物」ということですから、神様たちと、彼らをもてなすこの世界の住人しかわからない生き物の料理なのでしょう。

(中略)

(2)豚になった千尋のお父さん
 簡単に言うと、お父さんは料理を食べてすぐ豚になったのではなく、少しずつ本当の豚になっていったのです。
 それは千尋が湯婆婆に名前を取られて、だんだんと元の名前を忘れてしまい、ハクに言われるまで思い出すことができなかったのと同じようにです。

『千と千尋の神隠し』は、異界を描いたものである同時に、私たちが暮らしている現実の世界を描いたものです。
 そして映画のテーマは、美少女でもなく、類稀な心の持ち主でもない、ヒョロヒョロの手足とぶちゃむくれの表情の、まさに等身大の現代っ子が、危機に直面して生きる力を獲得するというものでした。

(中略)

 千尋にとっては、宮崎監督の言葉によれば、
「10歳の少女が世の中というべき中へ投げ込まれ、修行し、友愛と献身を学び、知恵と発揮して生還する物語」であり、彼女は「侵食され、喰らい尽くされる」ことなく、「生きる力を獲得する」のですが、お父さんとお母さんにとってはその逆のこと、つまり「喰らい尽くされる」側になることを体験するのです。
 一度豚になった人たちは、再び人に戻ることなく、身も心もどんどん豚になっていきます。これは何もファンタジーの世界だけの出来事ではありません。
 宮崎監督によると、バブルの時に本当に豚そのものになっていた人がいて、今でも自分が豚になっていることに気がつかずに、不景気だ、エサが足りないと言い続けているのと同じだということです。

 千尋はそれでも、最後に湯婆婆の試しに挑戦し、「この豚の中に両親はいない」と言い当てます。いったいどうしてでしょう。
 千尋が特別な能力を身につけたから、両親を豚と見分けることができたのではありません。10歳の女の子が数々の危機をくぐり抜けて、「生きる力」を獲得したら、みんな自然とそれができるはず、というのが宮崎監督の答えです。

この手紙を、スタジオジブリのどなたが書いたのか明かされていませんが、もの凄く丁寧な返事に、ファンを大事にしていることがわかりますね。