風の谷のナウシカ 7巻にわかに、ひっそり、穏かに『ナウシカ2』の話題がふつふつと盛り上がっていますが、実現するにしても、まだまだ先になりそうですね。
まず、庵野監督の『ヱヴァンゲリヲン』が完結するのが何年後なんだ、という話もありますが、宮崎駿監督が現役であるうちは、実現しないような気もします。



ジブリの永続性を望むジブリファンとしましては、『ナウシカ2』をエサに庵野秀明監督をジブリに誘い込み、三部作の長編という檻に閉じ込めて、新ジブリのスタイルを構築していくという筋書きを……、って、なんだか、バッシングを受けそうなので、この話は辺で……。

『ナウシカ2』が作られるのかどうかは分かりませんが、ナウシカがらみの話題で、「ジブリ汗まみれ」に庵野秀明監督が遊びに来たときの放送を文字に起こしました。
『風の谷のナウシカ』制作時の思い出話をするなかで、原作『ナウシカ』の7巻を庵野監督がべた褒めしています。

また、当初『ナウシカ』の絵コンテには、王蟲と巨神兵が戦うシーンがあったそうです。観てみたいですね。

 

巨神兵と王蟲が戦う絵コンテはすごかった

庵野:
昔、宮さんが塾を二馬力でやってたときに、一回行きましたね。
でも、宮さんって、なんかこう、自分が好きか、「こいつはいける!」っていう人じゃないと教えないじゃないですか。

鈴木:
そう。やっぱり、依怙贔屓なんだよね(笑)。

庵野:
依怙贔屓と、やっぱり基本的には自分の下駄が欲しいので。
自分の役に立ちそうな奴しか、労力を使わないですよね。

鈴木:
あはは。

庵野:
僕が『ナウシカ』のときに、色々教えてもらったのはそれだなあって(笑)。
巨神兵をこいつにやらせとけば、自分はそれを直す手間の分、ほかのことやれるっていう。それだと思いますね。

鈴木:
まあね。でも、だって、あれやってくれるだけで、すごいホッとするんだもん。

庵野:
うーん、でしょうね。だったと思います、いま考えれば。

鈴木:
でも、ラストシーンは『ナウシカ』良かったんですかね、あれで。

庵野:
映画はあれで良かったと思いますけど。

鈴木:
宮さんの最初の案は、とにかく王蟲が突進してきて、そこへ降り立つナウシカ。で、いきなりエンドマーク。
それで王蟲の突進は止まると。……これは困ったんですよ。

庵野:
いやー、轢かれないと困るでしょうね。

鈴木:
だから延々、僕ね、それこそ最後のほうコンテが出来たとき、高畑さんとふたりで阿佐ヶ谷の喫茶店で、8時間ぐらい、色々話したんですよ。これで行くのか行かないのかって(笑)。
それで、とにかく現状はいまある案。2つ目がナウシカが死んで、伝説の人になる。で、3つ目がね、死んだあと甦るっていう。それで最後さ、高畑さんがね、「鈴木さんどれが好きですか」って。

そりゃ、やっぱ甦ったらいいんじゃないですかねえって。「じゃあ」つってね、ふたりで宮さんのとこに言いに行くんですよね。いやー、判断が早くて。「ふたりで決めたんでしょ、じゃあそうします」って。考えないんだよね。

庵野:
あのとき見せてもらった、巨神兵と王蟲が戦うのは、見たかったですね。

鈴木:
アハハハ(笑)。

庵野:
あれ、かっこ良かったですよね。
僕は、全然描けなかったと思いますよ、あのコンテのままだったら。

鈴木:
でも、あの巨神兵はすごかったよね。

庵野:
まあ、宮さんだったら出来たんですね。
『ナウシカ』の途中で、最初に面接でお会いしたときには、ものすごく緊張したんですけど、段々それが解けて、ただのオヤジになっていったんで。普段アニメ作ると、宮さんってフィルターかけちゃうじゃないですか。

鈴木:
バランスとるんだよね。

庵野:
ええ、いい人っぽく。

鈴木:
そうそうそう。

庵野:
本当はそうじゃないじゃないですか。

鈴木:
そうそうそう、悪い奴だもんね。

 

『ナウシカ』の7巻は宮さんの最高傑作

庵野:
『ナウシカ』の打ち上げのときに言ってたんですよ宮さんが、「人間滅びてもいいじゃん」っていうの。

鈴木:
そうそうそう。

庵野:
『ナウシカ』の打ち上げのときに、最後のほうの、相当宮さんも飲んでたときに、スタッフのアニメーターの若い女の子が、ひとり食って掛かってて。
「人間が滅びてしまうじゃないですか、そんなの作っていいんですか」みたいなことを言ったときに、「人間なんてね、滅びたっていいんだよ! とにかく、この惑星に生き物が残ってれば、人間という種なんて、いなくなっても全然いいんだ!」っていうのを怒鳴ってるのを僕は横で聞いてて、この人すごいと、そのとき思ったんですね。
クリエイターとして宮さんが好きになった瞬間でしたね。人そのものに執着してないってのが根っこにあって、あれすごくいいですよね。

鈴木:
「もしかしたら、私達そのものが汚れかも知れない」、もうそのセリフ読んだときにね、ああこの人、人間よりあっちのほうが好きなんだって。

庵野:
『ナウシカ』の7巻は宮さんの最高傑作だと思いますね。まあ巨神兵のくだりは別にしてですね、宮さんの持ってるテーマ性っていうのが、あれに、すごくこう……。

鈴木:
集約されてる?

 
 
庵野:
集約されてるっていうか、もう原液のまま出してるわけですよね。本当に、本当はすごく、こう、アレな人なんですけど。

鈴木:
そう。あの、負の部分っていうのか。

庵野:
それがストレートに7巻には出ててよかったですね。『ナウシカ』の漫画にも色々出てますけども、7巻は特にそれが凝縮していて、いいですね。

鈴木:
『ナウシカ2』をやらせろって言ったのはいつなの?

庵野:
あれは……、『ラピュタ』のころだったと思いますけど。吉祥寺で言った覚えがあります、最初にね。

鈴木:
あれ、だけど俺、宮さんに真剣に庵野がやるならいいんじゃないですかって。俺はこう説得したんですよ、宮さんを。「3部作にしたらどうだ」って。そうするとね、多分2本目は、宮さんが書いてるように、ある種、殺戮の映画だと。で、第2部はそういうことでいうと、さあ、このあとどうなるんだろうという、そういう映画を作ればいいわけだから、庵野がやれば絶対面白くなると。で、その締め括りをね、宮さんが第3部でやったらいいんじゃないかって。いい説得でしょ。

庵野:
ハハハハ。

鈴木:
そしたら怒っちゃって。やめてくださいって(笑)。

庵野:
僕がやりたいのは7巻ですけどね。

鈴木:
じゃあ、最後じゃない。

庵野:
ええ。

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