『ルパン三世 カリオストロの城』アニメージュ 79年11月号

宮崎駿作品というと、少なくとも製作期間に2年を費やし、ウン十億という資金によって作られている印象がありますよね。
しかし、これだけ手間ひまをかけて作られるようになったのは、『もののけ姫』からの話です。それまでは、1年間の製作期間で作られた作品がほとんどでした。



なかでも、宮崎監督の長編アニメーションのデビュー作となった『ルパン三世 カリオストロの城』は、なんとたったの4ヶ月半で作られたといいます。そして、製作費は5億円。引退作となった『風立ちぬ』は、製作費50億円といわれているので、10分の1ですね。

この限られた時間と製作費で、あれだけクオリティの高い作品を作ることができたのは、宮崎駿監督がもの凄く手の早いアニメーターで、なお且つ手抜きの天才だったからと言われています。なんて、コストパフォーマンスの良い監督なんでしょう。

現在のアニメ製作では考えられない、この殺人的なスケジュールは、いったいどのように進められていったのでしょうか。
「アニメージュ 79年11月号」の『ルパン三世 カリオストロの城』特集に、製作進行メモが掲載されているのでご紹介します。

『ルパン三世 カリオストロの城』製作進行メモ

『ルパン三世 カリオストロの城』製作進行メモ

  • 6月10日 シナリオ(最終稿)あがる。
  • 6月末 絵コンテ、全体のうち1/4があがり、以後、原画と平行して進める。
  • 7月はじめより、原画にかかる。
  • 7月23日 動画イン。
  • 9月中旬 撮影開始。(以後、絵コンテ、原画、動画、撮影を同時平行。スタジオは本格的に戦争状態となる)
  • 11月2~3日から11月6~7日ごろまで、アフレコ予定。
  • 11月20日 納品予定(セル枚数は、宮崎氏、大塚氏のコった演出、作画のため、一コマ、二コマ撮りなども多く、現時点で5万枚はこえる見込みである)

7月初めから原画に取りかかり、11月20日に納品とあるので、ほんとうに4ヶ月半ですね。
質の高さ/製作期間比でいえば、日本の長編アニメーション史上最短の製作期間記録ではないか、とは大塚康生さんの言葉。『作画汗まみれ』のなかで、もし一年以上かけて作ることができれば、100年の映画生命も夢ではなかったと、大塚さんはふり返っています。

また、宮崎駿監督は後のインタビューで、製作期間の短さに妥協も多く、しばらくダメージになったことを明かしています。

宮崎:
『カリオストロの城』は小学生ぐらいのときからやりたかったことなんですよ。それをやってみたわけです。やってみて、かなりいいところまでいけた。たとえるならば、地平線の彼方にゴールの金色のモスクが見えるところまではたどり着いた。ところが、そこから撤退せざるを得なかったんです。最後の最後に、妥協をしなきゃいけなくなりました。もうちょっと時間があれば……要するに、作品の締め切りに間に合わせなければいけなかったわけですね。
それが僕にとって、ダメージになりましたね。しばらく地面を這い回るような気分になったんです。

公開当時はSFブームだったこともあり、SF要素のない『カリオストロの城』はまったくヒットしませんでした。このことも、宮崎監督にはダメージとなったようです。

作り手としては、やり切れなかった想いや、痛みなども作品に残るものだと思います。
しかし、ファンからすると、『ルパン三世 カリオストロの城』は、この驚異的なスケジュールと内容を含め、充分に100年間生き残る映画だと思うのです。

作画汗まみれ
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