宮崎駿 高畑勲

宮崎駿さんが企画・脚本を務め、米林宏昌監督によって作られた『借りぐらしのアリエッティ』。完成したその作品を、宮崎さんは、どのように観ていたのでしょうか。
完成直後のインタビュー記事にて、宮崎さんの感想が掲載されています。



おびやかして欲しい

宮崎:
初号(試写会)というのはですね、スタッフと一緒に観るんですが、ぼくは(米林宏昌)監督を自分の前に座らせたんです。スタッフはみんなだいたいうしろに行くんですけどね。

――(笑)最悪ですね!

宮崎:
でも、観終わったとき、「麻呂、立て。みんなに挨拶しなきゃいけない」って、立ち上がって彼の手を取って、こうやって(挙げて)やりましたから、ぼく。

(中略)

宮崎:
ぼくが考えたことをブレることなく、自分のものとしてやれたと思いますよ。

――そうなんです。そこが、すごいんですよね。

宮崎:
うん、稀有な例でしょうね。そう思いました。まあ、鈴木さんなんかは意地悪いから、「宮さんの機嫌がいいのは、今回は(立場を)おびやかされてないから」とか言うけど。そういう分析もできるけど、でも、ぼくはもっと素直に喜びましたね。

――ですよね。うんうん。でも、こういう言い方もなんですけど、今回はおびやかされてますよ。

宮崎:
うん、いいですよ、おびやかしてくれたら。本当はおびやかして欲しいんですから。

完成披露試写で、宮崎さんは涙しており、鑑賞直後に鈴木プロデューサーに「俺、泣いちゃった」と漏らしています。また、宮崎さんは、「ジブリ生まれの演出家が誕生した」と嬉しそうに語り、米林監督を高く評価しました。

米林監督自身も、宮崎さんを意識したと述べており、宮崎作品の枠組みの中で、宮崎さん以外が作って成功した、珍しい作品となりました。

高畑勲の感想

ちなみに、高畑勲さんは、『借りぐらしのアリエッティ』を観た感想を、西村義明プロデューサーに話しています。
良い映画だったと褒めたうえで、「米林くんは一人で作ったんでしょうね。あの映画に命をかけようとした現場のプロデューサーがいない。それを感じる映画でした」と米林監督に寄り添うプロデューサーがいなかったことを指摘しています。