借りぐらしのアリエッティ米林宏昌監督の長編アニメーションデビュー作であり、代表作ともいえる『借りぐらしのアリエッティ』。この作品を作ることになる前は、まったく別の作品が企画にあがっていました。
スタジオジブリで若手の育成を模索していた当時、若手で映画を作ることだけは決まっており、あとは企画の成立だけでした。



当時、鈴木敏夫プロデューサーは、児童文学の『ぼくと「ジョージ」』という作品の映画化を考えていました。他に検討している企画もなく、鈴木さんの発案である、その企画で順調に進んでいたそうです。

『ぼくと「ジョージ」』は、12歳の少年ベンの心の中に住んでいるジョージとベンの物語で、思春期の少年の心の内側を描いた作品。このままいけば、この『ぼくと「ジョージ」』の企画が成立するというときでした。

よくも悪くも、人の言いだした企画に乗っかるのが好きじゃない宮崎駿監督は、切羽詰ったところで、「鈴木さん、アリエッティをやろう」と言い出しました。

借りぐらしのアリエッティ

企画成立間際、ギリギリで「アリエッティ」を思いついた宮崎監督は、嬉しそうに話し、もうアリエッティをやりたくてしょうがない感じになっていたといいます。なにしろ、「アリエッティ」の企画は、高畑監督と宮崎監督のふたりが、若手時代に考えていた企画で、当時断念していたものでした。

鈴木さんも、ずっと『ぼくと「ジョージ」』の企画を考えてきて、あるニオイだとか、こうやってやれば出来る、という方向も、ある程度見えてきたところです。そこをひっくり返されたら面白くありません。

しかし、鈴木さんも、高畑監督と宮崎監督が映画化を検討した作品なので、面白いことはわかっていたそうで、土壇場で『借りぐらしのアリエッティ』に企画が変更されることを受け入れたのでした。

そして、米林監督は見事に『借りぐらしのアリエッティ』を作りあげ、興行収入92.5億円の大ヒット作品となったのです。