スタジオジブリが世に送り出す、原画集から劇場用パンフレットまで、数多くの出版物がある。図書印刷 株式会社は、その印刷をほぼ一手に引き受ける。そんな会社で「ジブリ番」を20年担ってきたのが、鈴木敬二さん。
「ジブリの印刷物って、色が大変でしょう」
そう何百回とたずねられてきた。その度に「図書印刷は、ずっとこれをやってきたんだ」という自負が胸に湧き上がる。
この仕事には、勘所がある。
「自然の色や光。緻密な構造物や生活空間。人物もさることながら、スタジオジブリの作品を特徴づけているのは、背景なのです」
そんな映像を何度も見返し、脳裏に「ジブリの色」を焼きつける。実作業を担うスタッフは、すべて専任。ともに経験を積んできたから、いちいち説明せずとも、「あ・うん」の呼吸で仕事ができる。
「勘所をつかむまで3、4年かかりました」
受け取った素材は、だれが、どんな考えに基づいてつくったのか。監督やスタッフによって、ディテールの描き込み方や色づかいが微妙に違う。そうした一人ひとりの“癖”は、何度もジブリの現場に足を運んだからこそ、つかむことができる。疑問があれば、直接、本人と話して確認する。