スタジオジブリの最新作『レッドタートル ある島の物語』の会見が、日本外国特派員協会で行われ、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督が出席しました。
本作は、鈴木敏夫プロデューサーから長編製作を依頼され、ヴィット監督は「尊敬する高畑勲監督から長編映画の製作全般について助言を受ける」ことを条件に実現した作品。
「ジブリ作品の美学」を聞かれたヴィット監督は、「特定した美学はないと思うが、宮崎駿さん、高畑勲さん独自の美学はあると思う。ジブリ作品に共通するのは繊細さと大人っぽさ」とコメント。そのうえで自身の作品を「本作でそれを模倣しようとは思わなかった」と解説しています。
その一方で、ヴィット監督は「僕の作品とジブリの作品と似ているところがあるとすれば、一種の繊細さ。特に高畑監督の『ホーホケキョとなりの山田くん』は俳句の様な作品で素晴らしかった。僕が目指すものも、それに近いところはあると思う。そして、自然に対する敬愛、そのなかにある人間の有様といったテーマ性も、僕が追及するものと似ているところがある」と共通点を挙げ、「難しいことは関係なく、僕はジブリの作品が大好きなんです」と微笑みました。
本作は登場人物のセリフがないことが大きな特徴となっていますが、「最初の段階ではセリフが少しある構想だったのです。というのもストーリーやキャラクターの人間性を出すためにセリフは必要だと思っていたんです。しかし、セリフが少しある絵コンテや脚本をジブリに送ったら『セリフが必要ないどころか、ないほうが強い作品に仕上がる』と提案されたんです。セリフがないというのは、映画として怖いところもあるのに関わらず、ジブリさんが作品を信じてくれたことに安心した」と経緯を語った。
また劇中に登場する津波のシーンについて外国人記者から質問があがると「2007~2008年に構想を考えていたときからあったシーンなんです。その後、東日本大震災で甚大な津波の被害があったことは知っています。とてもセンシティブな問題なので、ジブリにも相談しました。鈴木さんも高畑さんも慎重に議論されたようですが、ストーリーの中の重要性や、決して面白おかしく描いているわけではないという判断だったので、このシーンはそのまま描かれているんです」とヴィット監督は説明しています。
外国人記者から「今後も海外の監督と仕事をする予定はあるのか?」と質問されると、会見を後ろで見ていた鈴木敏夫プロデューサーが「マイケルは特別。彼の短編映画が大好きで、長編映画も観たくなっただけ。だから、これをきっかけにそういうことをどんどんやっていくかといったら、出会いがあるかどうかだと思っています」と積極的に進めていくつもりはないことが明かされました。
レッドタートル ある島の物語 詩情あふれるマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督初の長編アニメーションを絵本化。池澤夏樹の言葉で物語る。 |