押井守監督と鈴木敏夫プロデューサーのトークイベントが、新宿ピカデリーで行われました。押井監督は登壇するや、「聞きたいことは、ただ1つ。ジブリ、どうするつもりなの?」と質問。鈴木プロデューサーは「パトレイバーの話、するんでしょ?」ととぼけるも、押井監督からは「そんな話、聞いてない。どうするも、こうするも、リストラも必要だろうけど、リストラしたいから、こうするの?」と、スタジオジブリがアニメーターをリストラしていると暴露した。
対して、鈴木プロデューサーは「そのままだよ。リストラは必要だけど、どうするも何もずっと続けるしかない。本当の理由は、何を作るかが難しい。何を作るか、誰が作るか…これだよね。機が熟せば、新作をまたやってみたい」と吐露した。
その上で「アニメの状況が変わってきて、日本のスタッフだけで作るのが難しくなっている。アジア、特にタイやマレーシア、ベトナムから優秀な人材が生まれている。ピクサーで修行を終えて、国に帰るとスタジオを作る。世界でアニメの映画を見ると、アジアがグランプリを取っている」と、アジア諸国のスタッフを起用していく可能性を示唆した。
押井監督はさらに「ジブリをどうするか聞いてるの!」と追及。鈴木プロデューサーが「続けるしかない」と答えると、「誰作るの?」と質問を重ねた。鈴木プロデューサーは「知らないよ」とタジタジになった。
それでも、押井監督は追及の手を止めず、「だいたいジブリをやめる気あるの? 業界的にいうと迷惑。あれだけの人間(社員)は、Production I.Gじゃ引き取らないよ」「(アニメーターを)全員、クビにするの?」。
「押井さんは、I.Gでどういう立場なの」とあきれた口調の鈴木。そこで押井監督が「俺? 出入りの業者だよ。ただ、石川との暗黙の了解で、I.G以外ではアニメをしないことにしているんだけどね」と続け、鈴木も苦笑い。
鈴木プロデューサーは「全員はしないから」と答えたが、「半分にするの?」との問いには「まだ、ひどい…」と明言を避けた。
押井監督は、宮崎監督についても「仕事がなくなって、監督でなくなるのが自然。自分からやめるなんて傲慢。宮さんがやめると言ったら(映画を共同で製作する)日本テレビの株が下がると思って引退会見をやったんでしょ」と批判した。
鈴木プロデューサーは「ウソじゃない。宮さんが会見を開きたいと言ったの」と反論したが、「誰も信じてない。断言してもいいけど、たぶん来年くらいから始めるよ。美術館用の短編を作ると言っているみたいだけど、その短編がどんどん伸びていって、それが70分になり、80分になるよ」と宮崎監督の復活を予想した。
一方、鈴木プロデューサーは「宮さんはこういう言い方をした。自分は今まで手も出してきたし、口も出してきた。でも、これからは口だけ出して作っていきたいってね」と語り、二人は大爆笑。
押井監督は、8月26日に都内で行われた第27回東京国際映画祭記者会見の席上で、鈴木プロデューサーが「新世紀エヴァンゲリオン」などで知られる庵野秀明監督を、宮崎監督の後継者と発言した件についても疑問を呈した。
鈴木プロデューサーが、ジブリと庵野監督の会社・カラーとのコラボを否定したことを前提に「ウソだ。後継者というのは宮さんの席に、ジブリに来て座るということ」と厳しく指摘した。鈴木プロデューサーは「ウソじゃない。庵野自身、宮さんの弟子だと公言している。お互い、師であり弟子であると認め合っている」と答えた。
司会者が、押井監督が後継者になる可能性はなかったか聞くと、「還暦を過ぎた人を指名するわけにはいかない。年齢の問題が大きのと、押井さんは宮崎駿のことをライバルだと思っているんでしょう?」と答えたが、押井監督は「ライバルじゃない。敵だ!って言ったの」と一蹴した。
一方で押井監督は、庵野監督が「風の谷のナウシカ」で巨神兵を描いたことを引き合いに、「多分さ、庵野が『ナウシカ2』をやるのが一番正しい。それだったら出来るから。ドロドロで、すさまじいヤツを作れば、いろいろなものが全部終わり納得するはずだし、30年くらいたったら全て収まる」とも提案。鈴木プロデューサーは「俺もそう思う」と同意した。