岩井俊二監督の呼びかけで、「映画は世界に警鐘を鳴らし続ける」という、原発事故、原爆投下、地殻変動などの危機的状況をモチーフにした映画特集が、日本映画専門チャンネルにて放送されます。そのなかの特集で行われた、岩井監督と、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーによる、対談番組収録時のトークが公開されました。
80パーセントの人が原発の安全を信じていた
鈴木:
僕としては原発に対して「こんな危険なものは良くないし、それを推進するべきではない」と当時から思っていました。去年の夏くらいのことですが、実は福島の原発の中にトトロのお店があったんですよ。これは僕の不徳のいたすところで全然知らずにいて、即刻撤去するように話し合いを持ちました。揉めに揉めた末にお店を撤去させると、そのことを朝日新聞が反対でも賛成でもない姿勢で、社会面で取り上げたんです。するとスタジオジブリに「原発は安全だ」、「東京の電力がどこから供給されているか知らないのか?」といった抗議がたくさんあって、一時期大変だったんですよ。
岩井:
そんなことがあったとは知りませんでした。震災前は、原発の安全を信じている人がそれだけいたということですか?
鈴木:
調査をすると、80パーセントの人が原発の安全を信じていましたよ。僕は逆に反対派が80パーセントはいると思い込んでいたんですが。そういったこともありましたから、どこかで原発問題は自分とは無関係ではないと感じていたし、いつか嫌なことが起きるのではないかという思いが強くありました。それが予想以上に早く来た。
岩井:
危険は承知でも、今すぐに訪れることはない、と距離を置いていたというのならば分かりますが、原発の安全を信じている人がそこまでいたということには驚きました。
鈴木:
うちの社内の人間にもいましたよ。やっぱり、時間ってすごいですよね。いろんな記憶を風化させてしまい、原発が安全だと思うようになってしまうんですから。