埼玉県所沢市と東京都東村山市にまたがって市街地に残る約5700平方メートルの雑木林・淵の森の保全活動「早春の下草刈り」に19日、宮崎駿監督が参加。自前の鎌を持った宮崎さんと、県内外から集まった宮崎作品のファンら約220人が一緒に汗を流した。
淵の森は、映画「となりのトトロ」の構想を練ったとされる場所。宅地開発計画が浮上した平成8年、宮崎さんが3億円を寄付するなどして、所沢・東村山両市によって公有地化した。



1996年に宅地開発されそうになったのを宮崎監督らの寄付や募金運動で公有地化し、「淵の森の会」を結成、宮崎監督が会長になり、以来、会員やボランティアが下草刈りなどの手入れをしている。

2007年には柳瀬川の対岸にある東村山市の「八郎山」が宅地開発されそうになったが、八郎山も全国からの募金活動で公有地化された。

この日は寒風が吹きすさぶ肌寒い天気となったが、午前9時に親子の会員らが集合、宮崎監督が「淵の森らしさを残すため落ち葉掃きはしない。落ち葉の下にイチリンソウなどの芽が出ているので、摘まないように気を付けながら下草刈りを楽しもう」とあいさつした。

下草刈りは毎年1回、新芽が生えそろう前に開催している。この日は、古くなった遊歩道のくいを建て直すなどの作業も行った。

ドイツ人の留学生や茨城県、香川県の小豆島、横浜など県内外からの幅広い参加者たちは軍手をして鎌やシャベルでササや雑草を刈り、枯れ枝を集めてビニール袋に詰めて集積所に運んだ。また傷んだ柵を取り替え、ロープも全て張り替えた。

吉見町から来た女子学生3人は「参加者が多くて驚いたけれど、心地よい汗をかいた」と笑顔で話していた。約2時間かけて作業を終えた参加者は差し入れの甘酒で暖を取り、宮崎監督も「見違えるようにきれいになった」とねぎらっていた。

宮崎さんは昨年9月の引退宣言後も、アトリエに通いながら淵の森周辺の保全活動を行っている。「木と共存するのは難しいが、できることからやればいい。四季を感じながら町を歩いていれば、自然と体が動くでしょう」と、年々緑が増えていく森に目を細めた。