第86回アカデミー賞授賞式に参加したスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、会場となったドルビー・シアター近くのホテルで授賞式直後の思いを語った。長編アニメ映画賞にノミネートされていた宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』は惜しくもディズニーの『アナと雪の女王』に敗れたが、鈴木プロデューサーは「アカデミー賞を受賞できなかったのは大変残念ですが、こちらに来る前に実は『アナと雪の女王』を観ていたんです」と明かした。
「僕の中に、『雪の女王』という原作を基にディズニーがどんな映画を作るのか観てみたいという思いがあったんです。なぜなら、因縁めいていますが、若き日の宮崎さんが、『雪の女王』(1957年のロシア映画)を観て大変感動し、『いつかこういう映画を作ってみたい』と語っていたことがあったんです」と鈴木プロデューサー。
「最初はディズニーが原作を大幅に変えるなんて話も聞いていたけど、観たらまったく原作の精神である自己犠牲のテーマを変えていなかった。これは驚きでした。古典をちゃんと古典として描いているんです。それと原作通り2人のヒロインの話になっている。アニメーションに限らずどんな作品でも、男女の話にして、男の子の手を借りるものですが、この作品はちゃんと2人のヒロインの話になっているんです。そのことに感心したのと同時に、今の時代を表している作品になっていると思いましたね」とたたえた。
また、「まだその作品を観ていない宮崎さんにそういった話をしたら、宮崎さんも『アメリカの賞なんだから、多分その作品が受賞するよ』と言っていたんですよ」と明かしていた。
『風立ちぬ』は先月から全米で封切られ、約500スクリーンで上映されている。真珠湾を攻撃した零戦の設計者を描いた映画が、全米でこれだけの規模で公開されるのは異例のこと。宮崎作品が批評家に非常に高く評価されているだけでなく、一般客にも熱烈なファンが多い事実を物語っている。