なつぞら 坂場一久 高畑勲『なつぞら』第70話から登場して、強烈なインパクトを与えている坂場一久くんことイッキュウさん。
彼は、絵は描けないけれどアニメーションに関する知識は人一倍多く、企画力にも優れていて、非常に論理的。無理難題を言ってアニメーターたちをいつも困らせるという役どころから、高畑勲監督をモデルにしていると思われます。



東大卒・哲学科の坂場一久と
東大卒・仏文科の高畑勲

坂場君の経歴は、東大卒で哲学科出身というエリート。対する高畑勲さんも東大卒で、哲学科ではないですけど仏文科出身です。

そして坂場くんは『わんぱく牛若丸』の演出助手を務めていますけども、高畑勲さんも東映動画に入社したてのころは、演出助手として雑用もこなしていました。暇を見つけてはいろんな部署に行って、話を聞いてまわっていたそうで、そのときの経験がアニメーションの演出にも活きたそうです。

『わんぱく牛若丸』演出助手の坂場一久と
『わんぱく王子の大蛇退治』演出助手の高畑勲

高畑さんは、『わんぱく王子の大蛇退治』では演出助手を務めていましたので、『なつぞら』の『わんぱく牛若丸』の“わんぱく”もそこに掛かっているものと思われます。

『なつぞら』のアニメーション時代考証を担当している小田部羊一さんは、『わんぱく王子の大蛇退治』で高畑さんと演技を巡って論争になったというエピソードがあります。
小田部さんの認識では、かんしゃくを起こして喧嘩しただけだったそうですが、その様子を見ていた奥山玲子さんは、高畑さんと対等に言い合っている小田部さんのことを凄いと思ったそうです。その出来事が、結果的にお二人の馴れ初めとなりました。ドラマでは、なつが論争を起こしていたわけですが、さてこの先何が起きるのでしょうか。

アニメーションの世界に惹かれた作品は共に『やぶにらみの暴君』

また、第72話では、坂場くんがアニメーションの世界に入ることになった切欠の映画も明かされました。それは、アンデルセンが原作のフランスのアニメーションと語られていたので、『やぶにらみの暴君』を指しているようです。本作は、高畑勲さんが大学生のときに観賞し、アニメーションの世界に入る切欠となった作品でもあります。現在は、『王と鳥』と改題され、ジブリ美術館ライブラリーとしてDVD化されています。

高畑勲と天沢聖司が投影されている?

そして第73話では、ジブリ作品のオマージュがありました。それは、坂場くんが以前、“アニメーションとは何か”ということについて言いかけていたことがあって、その続きをなつが聞きました。すると、坂場くんは「それは、あなたが考えてください。それがアニメーターに対する敬意だと思います。あなたが本当のアニメーターなら」と答えます。
その返事に、なつは「やな奴、やな奴、やな奴!」と月島雫ばりの怒りっぷりを披露したのでした。まさかの『耳をすませば』のオマージュが盛り込まれていて、坂場くんは高畑さんだけでなく、天沢聖司も投影されているのかもしれません。

現在進行形で、まだまだどんな展開になるか予断を許さない『なつぞら』ですが、この先も東映動画の面々や、ジブリ作品を匂わせるシーンが登場してくることでしょう。
もしかしたら、丘の上でプロポーズなんてシーンもあるかもしれないですね。

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