宮崎駿監督が、小さな子どもに向けて作った作品『崖の上のポニョ』。この作品は当初、中川李枝子さんの児童文学『いやいやえん』のアニメーション化という企画から始まっています。『いやいやえん』は、保育園に通う4歳の男の子の日常を綴った絵本です。『ポニョ』にも、その名残が残っていますね。
『いやいやえん』の企画を進めていくうちに、宮崎監督は映画の中で保育園を作ることよりも、実際の保育園を作ることに興味が移っていきます。そして、スタジオジブリ社員専用の保育所「三匹の熊の家」を作ることとなりました。
実際に保育所を作ってしまったことで、『いやいやえん』の企画は中止となり、オリジナル作品の『崖の上のポニョ』の製作がスタートしました。
この企画の経緯については、鈴木敏夫プロデューサーが「『崖の上のポニョ』ロマンアルバム」のなかで話しています。
『崖の上のポニョ』企画の経緯について
鈴木:
宮さんと、次の作品について話をしている時、僕の方から「子ども向けをやりましょう」って持ちかけたんです。なぜかと言うと、『ハウル』の中で、カルシファー、マルクルとソフィーのやり取りの場面が<児童もの>としてすごく良かったから、あれの発展系を是非見たいと思ったんです。作品全体であれをやったら、小さな子どもたちは本当に大喜びするだろう、と。「じゃあ題材は?」って宮さんが言うので、僕は『いやいやえん』って答えました。そうしたら、宮さんが悩んでしまって。――どのような部分に、ですか?
鈴木:
「『いやいやえん』はやりたいと思う。ただ大村さんの絵をアニメーションで動かすのは難しい」と言うんです。僕は「それなら宮さんの絵でやればいいじゃないか」と考えたので、中川さんと交渉することにしたんです。(略)
ところがその後、問題が起こりましてね……宮さんが「鈴木さん、一生のお願いがある。保育園の話を映画で作るより、本物の保育園を作りたい」と言い出した(笑)。
それで、子どもを主人公にするという基本を残したまま『崖の下の宗介』というタイトルになって、「やっぱり(タイトル的には)上だろう」ということになり、現在の『崖の上のポニョ』になったんです。
ロマンアルバム 崖の上のポニョ 『崖の上のポニョ』を、豊富なビジュアルと詳細なテキストで徹底解説したメモリアルブック。 鈴木敏夫プロデューサーをはじめ、スタッフのインタビュー。関連資料を掲載。宮崎駿監督の記者会見コメントも収録。本作を解き明かします。 |