世界的にも珍しい、アニメ、コミック系のエンターテインメントに特化した美術館がパリにあるのを、ご存知だろうか。オステルリッツ駅に近い13区のセーヌ川沿いにある、スタイリッシュな建物の一角に位置するアールルディック(Art Ludique)だ。昨年11月にピクサー展で開館した後、今年3月からはマーベルコミック展を開催。アニメファンの新名所として注目を浴びている。
そんななか、第3弾の企画として開催されているのが、スタジオジブリレイアウト展である。「スタジオジブリ」という名前は、いまやフランスでも老若男女を問わず広まっている。もともとは宮崎駿映画の人気に始まり、その後「平成狸合戦ぽんぽこ」などで人気を得た高畑勲も加わって、日本のアニメを代表するスタジオとして広く知られるようになった。ちなみに今年6月のアヌシー国際アニメーション映画祭では、「かぐや姫の物語」でオープニングを飾った高畑が、名誉クリスタル賞を授与されたことでも話題になった。本展はそんな宮崎、高畑の作品を中心に、約1300点に及ぶジブリ作品のオリジナル・レイアウトを紹介している。宮崎は以前、フランスのコミック作家ジャン・ジロー(通称メビウス)と一緒に展覧会で紹介されたことがあるが、ジブリとしての本格的な個展は今回が初めてだ。ポスターに、わざわざ縦書きのカタカナが記載されているところなど、アニメファンを中心にいまや日本語が注目されていることが伺える。
さらに宮崎、高畑両者のロングインタビューの映像や、レイアウト部分にあたる各作品の映像の抜粋もあり、最後は「千と千尋の神隠し」のセットをバックに無料でインスタントフォトを撮ることができるおまけつき。またフランス語のみならず、英語の翻訳も提示されているところも、かゆいところに手が届く心くばりだ。この美術館は地元のパリジャンに限らず、海外からのツーリストも頻繁に訪れるため、これはポイントが高い。本展も週末には入場待ちの行列ができるほどで、ジブリ人気を物語っている。来年3月1日まで開催中なので、パリを訪れる予定がある方は覗かれてみてはいかがだろう。ちなみに同じ建物にはファッション系の展覧会を開催するモードとデザインのセンターや、セーヌを展望するレストラン、クラブなどもあり、観光スポットとしてもおすすめだ。Dessins du Studio Ghibliは2015年3月1日まで
美術手帖 2008年 9月号「スタジオジブリのレイアウト術」 レイアウトとはいわばアニメーション映画の設計図。キャラクターの動き、背景との位置関係、カメラワーク。そうした演出のすべてが、ここに描き込まれている。 「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「もののけ姫」等これまで公開されることのなかったレイアウトを通して、高畑勲・宮崎駿らの表現の根幹を探る。 |