高畑勲監督の『かぐや姫の物語』で、かぐや姫の声を演じた朝倉あき、彼女の幼なじみである捨丸役の高良健吾、そしてかぐや姫を優しく見守る媼を演じた宮本信子が、収録現場での苦労や本作への思いを語りました。
『かぐや姫の物語』で声優をするにあたり、プレスコとアフレコでの苦労話などが語られています。



想像力を駆使するプレスコの難しさ

――映像よりも先に声をとるプレスコというスタイルはいかがでしたか?

高良:
正直、難しかったです。声優という仕事自体が初めてだったので、全てが手探りという感じでした。

朝倉:
同じくです。マイクに向かっているので動けないし。これはかなり想像力が必要なんだなと思いました。

宮本:
わたしも声優のお仕事は初めてでしたが、ドラマの本読みと同じつもりでやりましたから難しいとは思いませんでした。朝倉さんがいて、地井(武男)さんがいて、一緒に本読みをしている感覚。だって実際に芝居をするのはわたしではなく、アニメーションの媼がするわけですから(笑)。

高良:
なるほど。難しく考えすぎちゃったのかもしれませんね(笑)。どのくらいの距離で話しているのか、どれくらいの音量で話せば相手に届くのか、そういうことばかり気になってしまって。

宮本:
考えすぎるタイプなのね(笑)。

高良:
だから「早くアフレコになれ!」と思っていたくらいで。

――アフレコもやられたんですね。

高良:
最終的に気になったところを直していくという仕上げのような作業でした。いつもは自分の目線で演技をしていて、それが自分の中では自然だったりするんです。だけど、プレスコでは想像でやっているから、そのイメージが合わない。このぐらいの距離感でやっていたけど、実際に絵で見たらこうだったんだなと。アフレコではそこを直すという感じでしたね。

朝倉:
わたしはアフレコをしてみたら、プレスコで良かったって思いました。伸び伸びできたんだなあと思って。アフレコだと秒数に収めなきゃいけなかったりするので難しくって。アフレコを体験したことで、プレスコのときにどれだけ自由にやらせてもらえていたのかということを実感しました。

――高畑監督の方からは「こういうふうに演じてほしい」というような指示はありましたか?

高良:
取りあえず、やってみるという感じでした。

朝倉:
わたしもまずやってみて、それを判断してもらうっていうことが多かったですね。脚本が本当に素晴らしいので、かぐや姫という女の子の気持ちには素直に共感できました。だから、むしろ映画で描かれている時代の建物についてや、かぐや姫の服装のこと、キジ狩りのこと、食べる瓜のこととかを教えてもらう方が多かった気がします。

高良:
僕の場合、自分はどういう場所にいるのかなど、内容についてばかり話していた気がします。具体的なキャラクターのことというよりは、今は山のどこにいて、みんなと何をしているんだろうということが気になっていましたね。

宮本:
わたしも高畑監督の方からは特になかったんですけれど、出演交渉があったときに媼に関してどういう考えをお持ちなのかということは聞きました。「夫に従順な、昔ながらの人物にするつもりですか」と。もちろん時代時代で夫婦関係が変わっていくと思うんですけど、わたしとしてはかぐや姫のことを思うあまりに暴走していく翁に対し、ちょっとでも批判的なものを出せたらいいなと監督にお願いしてみました。チラッとだけでもいいですからって(笑)。

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鉛筆と水彩で描かれた映画のアートワークを紹介。
監督:高畑勲、人物造形と作画設計:田辺修、美術:男鹿和雄による解説も収録。

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