氏家齊一郎

『かぐや姫の物語』は、高畑勲監督の最後の作品となりました。
この作品が公開されたのは2013年のこと。それ以前の高畑作品は、1999年に公開された『ホーホケキョ となりの山田くん』です。



なぜ、14年もの期間が空いてしまうことになったのか。

これまで鈴木敏夫さんは、スタジオジブリで高畑勲監督と4本の映画をつくって、大変な苦労をしていました。
そのため、『となりの山田くん』で打ち止めにしようと考えていました。

ところが、当時、日本テレビの会長だった、氏家齊一郎さんの希望により、高畑勲作品がつくられることになったのです。氏家さんは、「高畑さんの新作を見たい。大きな赤字を生んでも構わない。金はすべて俺が出す。俺の死に土産だ」と言ったといいます。

話の一部は、ラジオ『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』で阿川佐和子さんとの対談で明かされています。

鈴木:
氏家さんは、高畑さんのこと好きなんです。ほんとに、大好きなんです。高畑さんに会いたくてしょうがないんですよ。
あの氏家さんが、高畑さんの前に出ると、口調が変わるんですよ。宮さんには、「宮さん、あんたあれだろ」ってやっていてね、高畑さんには「高畑さんは、どうなんですか?」って、全然変わっちゃうんだもん(笑)。

阿川:
作品の評価が違うんだ?

鈴木:
大好きなんです。
月に一回、氏家さんに会いに行くと、最初から最後まで高畑さんの話ばっかり。大好きなんです。

(略)

氏家さんが言ったこと。いま、81歳でしょう。「死ぬまえに、高畑の作品をもう一本観たい」って。真剣なんですよ。一年間説得されたんです、氏家さんに。で、半年後、氏家さんに「高畑の作品が作れないのは、おまえのせいだろ!」って言い出して(笑)。
氏家さんに言わせると、「高畑さんにはマルキストの匂いがまだある」って。「だから、おれはあいつの作品を観ると、普通じゃ観られないんだ」って。