高畑勲展

麻布台ヒルズで装いも新たに始まった「高畑勲展」に行ってきました。



高畑勲展

本展は、2019年に東京で開幕して、岡山、福岡、新潟、台北、三重、岩手、静岡と海外を含む地域を巡回し、このたび6年ぶりに東京に帰ってきました。
個人的には、2024年の静岡展に行ってきたので、1年ぶりとなります。

高畑勲展

高畑勲監督が東映動画入社して間もない頃に参加した、内田吐夢監督による『竹取物語』の企画から始まり、高畑監督の最後の作品『かぐや姫の物語』の展示で締めるという、かぐやで始まりかぐやで終わるという構成です。

高畑勲展

展示物は以前からあるものがベースになっていますが、このたび初めて展示されたのが、庵野秀明監督がアニメーター時代に『火垂るの墓』で描いた重巡洋艦 摩耶が追加されました。今回のメインとも言える展示物でしょうか。

いまでは有名なエピソードとなりましたが、庵野監督は『火垂るの墓』に参加したとき、重巡洋艦 摩耶の作画を任され、延べ一ヶ月かけて事細かに調べ、可能な限り時代考証に合わせてハシゴや手すりの数まで正確に描き込みましたが、高畑監督の指示によりほとんど真っ黒に塗りつぶされています。

高畑勲展

当時、劇場で確認した庵野監督は、ほぼシルエットにしか見えないことに愕然としたといいます。

このたび、そのレイアウトとセル両方の原版が展示されたのですが、現物は映画で見るよりも細かな線がハッキリと確認できました。
確かに、これだけ細かく描いていて、真っ黒に塗りつぶされていたら、ショックも大きかったでしょうね。後に、「チクショウ。満艦飾にライトが点いて真っ黒はない」と文句を言いたくなる気持ちもわかります(笑)。

高畑勲展

セル画で見る摩耶はとてもカッコ良かったので、この機会にポストカードにしたら、庵野監督の想いも昇華されて良いんじゃないかと思ったんですが、グッズ化はされていなかったですね。

高畑勲展

その他の展示物でいうと、大きな変化はなかったように思いますけど、以前はあった『安寿と厨子王丸』の絵コンテ等の資料は無くなっていました。
これは高畑監督が携わった範囲が狭いため、省略されたのでしょうか。

高畑勲展

監督を務めた作品に関しては、レイアウトや背景画、絵コンテに原画等の展示物が豊富です。
今回改めて思いましたけど、高畑監督は作品によって作風が大きく変わっていくのが面白いですね。
1982年の『セロ弾きのゴーシュ』では、背景画が水墨画のテイストで描かれていて、この頃から高畑監督はセルルックではないアニメーションを作りたかったのではないかと思いました。

高畑勲展

この頃は、まだ手描きしかない時代なので、水彩タッチでキャラクターを彩色していくことはできませんが、その思いが結実したのが、1999年の『ホーホケキョ となりの山田くん』なのではないでしょうか。本作は、1コマあたり3枚の作画が必要で、実線・塗り線・マスク処理線が用いられ、筆で塗ったようなラフな彩色を実現しています。

おそらく、高畑監督は『ゴーシュ』を作っていた頃から、こういったことをやりたかったのではないかな、と今回の展示を観ていて思いました。

ショップ・カフェ

高畑勲展

今回のグッズショップとコラボカフェは、展示エリアの下のフロアにあります。
ショップのほうはチケットを持っていないと入れませんが、カフェの方はどなたでも入れます。

高畑勲展

グッズの撮影は禁止ですけど、パパンダのフォトスポットが設けられていて、抱き着きながら撮影することができます。

高畑勲展

コラボカフェの「喫茶 高畑勲展」では、コラボメニューも豊富です。
前期と後期で、一部メニューが分かれているので、食べたいメニューがある場合はお早めに!

高畑勲展 ―日本のアニメーションを作った男。
日程:2025年6月27日(金)~9月15日(月・祝)
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
時間:月水木金土・祝前日 10:00-20:00(最終入館 19:30)
   火日 10:00-17:00(最終入館 16:30)
   ※7月18日(金)~ 9月15日(月・祝)は 毎日 10:00-20:00(最終入館 19:30)