劇場公開から31年の時を経て、現在「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」で上映されている、『海がきこえる』を観てきました。
元々テレビ作品ということもあり、劇場鑑賞の機会は極端に少なく、今回が自分にとっても初の劇場鑑賞となります。
本作が公開されたのは、1993年5月5日。スタジオジブリ作品としては初のテレビ作品スペシャルアニメとして、日本テレビで16時に放映されました。日本テレビ開局40周年と銘打たれておりました。
放送当時、子どもだったぼくは、ジブリ作品が放送されるということで、わくわくしながらビデオ録画の予約を入れたのを覚えています(今でもそのビデオテープは、どこかにあるはず…)。
ちなみに、その前日には、スタジオぴえろ作品の『雲のように風のように』を再放送していました。
こちらの作品も、当時のジブリ作品に携わっていた若手スタッフが参加した作品で、近藤勝也さんがキャラクターデザインを務めたこともあって、ジブリ味のある作風となっています。
そして、この『海がきこえる』も近藤勝也さんがキャラクターデザイン・作画監督を担当しています。その他アニメーターも、原画・動画ともに両作に携わっている方がいます。
当時は、両作に同じスタッフが参加していることは知りませんでしたけど、連続してアニメーション作品が放送されるということから、この『海がきこえる』も面白い作品に違いない、という予感めいたものがありました。
初見の感想としては、「これまでのジブリ作品と全然違う!」というものでした。
ジブリ作品といったらパズーの冒険や、トトロや魔女のキキが登場するファンタジー。それから、高畑勲監督の『火垂るの墓』や『おもひでぽろぽろ』といったリアリティ路線の作品もありましたが、『海がきこえる』どちらとも違うという印象を持ちました。
いまとなっては、それらと何が違うのか説明できますけど、当時は「何か違う!」という静かな衝撃が心の中に広がったのを覚えています。
まずもって、青春を描いた学園ものというのは、ジブリではこのとき初めて登場しました。
いまでは青春ものの代表に『耳をすませば』を挙げる人が多いかもしれませんが、自分にとっては『海がきこえる』があってこその『耳をすませば』という印象があります。
そんな思い入れ深い本作。念願の劇場鑑賞ができて、感無量でございます。
大きなスクリーンで観るといろいろ気づくこともありまして、キャラクターの服装だとか、背景にある小物なんかも、「あれ? こんなとこに、こんなのあったんだ?」と発見もありました。
冒頭に登場する帽子をかぶった里伽子のファッションは、里伽子っぽくないよなぁ、とか。
モブのガヤだったり、効果音がはっきり聴こえたりして、テレビで鑑賞するのとはだいぶ違う印象です。
里伽子がコークハイ飲んでるシーンでは、はっきり救急車のサイレンが聴こえました。実生活では、サイレンってしょっちゅう聴こえたりしますけど、その生活感を出すためにわざとサイレンを入れたアニメーション作品って、なかなか無いですよね。
それから、改めて思ったのが、バイトで皿洗いしてる杜崎拓が、松野から呼び出されて、バイトをぶっちぎっていくところ。あれって、わりと責任感の強い拓らしくないなー、とか思ったり(笑)。
他にも、それまでのジブリ作品と違うカメラアングルだったり、いろいろお話したいことはありますが、長くなってしまったので、今回はこのへんで。またの機会に書きたいと思います。
渋谷での上映は期間限定ですので、皆さんこの機会をお見逃しなく。
ちなみに、ぼくが行ったときは年齢層も幅広く、20代から60代くらいの人たちで満員になっていました。
『海がきこえる』が人気作品になっていて、しみじみ嬉しく思ったのでした。