スタジオジブリ作品には、脚本家がついているのをご存知でしょうか。
高畑勲・宮崎駿作品は、監督自身で脚本を務めていますが、実はその他の監督作品では、脚本家を立てることが多いのです。
その中でも、数多くの作品に参加しているのが、丹羽圭子さんです。
元々、丹羽さんは徳間書店に勤務していて、鈴木敏夫さんの下で『月刊アニメージュ』の編集に携わっていました。
編集者として活動していましたが、スタジオジブリ作品にもスタッフとして関わるようになり、1993年にはジブリのテレビ作品『海がきこえる』に「中村香」名義で脚本家として参加します。
その後、2006年公開の『ゲド戦記』、2010年『借りぐらしのアリエッティ』、20011年『コクリコ坂から』と、立て続けにジブリ作品で脚本を務めます。さらには、2013年には宮崎駿作品『風立ちぬ』でも脚本に協力。2014年の『思い出のマーニー』、2019年には新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』、2020年にテレビ放映されたジブリの最新作『アーヤと魔女』の脚本も担当しました。
まさに、近年のスタジオジブリを支えた立役者じゃないでしょうか。
実は、『借りぐらしのアリエッティ』『コクリコ坂から』は、宮崎駿監督がプロットを作って、詳細を丹羽さんが書いて脚本に仕上げていきました。
つまり、宮崎監督との共作となります。これが達成できたのは、実は凄いことで、丹羽さんならではだったのです。
ジブリ初期の宮崎駿作品においても、脚本家を立てることを検討したことがあるそうですが、これまですべて上手くいかなかったそうです。
宮崎監督の映画の作り方というのは特殊で、思考が四方八方へと飛び、思いついたストーリーを部分的に作るため、徐々に整合性が取れなくなり、話がまとまらず、脚本家も根を上げていったのだとか。
一晩掛けて考えた話が、翌日には宮崎監督の考えていることが変わってしまい、設定がひっくり返されることもざらにあったそうです。一日で、最高三回変わったりもしたのだとか。
ところが、丹羽さんとは相性が良かったらしく、宮崎監督の飛躍する思考を上手いこと編集し、脚本に仕上げていくことができたそうです。
過去に根を上げた脚本家がいたため、鈴木さんも心配になって、「毎日これだけ言うこと変わってるけど大丈夫か?」と訪ねたそうですが、丹羽さんは「こんな楽しいことはありません。天才の思考過程じゃないですか」と喜んでいたのだとか。
実は、丹羽さんも、松竹シナリオ研究所に在籍していた学生時代に、「天才少女」と呼ばれる才能の持ち主で、天才と天才が上手く交わった稀有な例だったのかもしれません。
アニメーション作品は、作品の良し悪しを監督がすべて背負い勝ちですが、このように色々な才能が交じりあって作られているものなので、いろんなスタッフさんに注目して鑑賞してみては如何でしょうか。