『なつぞら』第88話にして、なつたちが作っている短編作品の全貌もみえてきました。その短編は、グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』を原作にしながらも、オリジナル要素がふんだんに盛り込まれた作品となっています。
そのオリジナルの部分や、なつたちの描くイメージボードからは、東映動画の『太陽の王子ホルスの大冒険』がモデルになっていることがわかります。
本作品は、高畑勲監督が初めて長編アニメーションの演出を務めています。アイヌの伝承をモチーフにした深沢一夫の戯曲『チキサニの太陽』を基にして製作されました。また、宮崎駿さんが本格的に携わり、高畑・宮崎コンビの始まりとなった作品でもあります。
『なつぞら』では、描かれたイメージボードのオオカミや悪魔のビジュアルが、そのまんま『ホルス』に登場していたものの焼き直しのようでした。そして、なつが思いついた「木の怪物」というのは、岩男のモーグを参考にしていると思われます。
『太陽の王子ホルスの大冒険』に参加したメンバーというのは、『なつぞら』に登場している主要キャラクターのモデルと思われる方々が参加していて、当時のアニメーション界で最高の布陣で作られています。現在においても名を残す名作となっているため、『なつぞら』でも必ず本作をモチーフにエピソードが作られるとは思っていましたけど、まさか短編で『ホルスの大冒険』が再現されるとは思いませんでした。
まだドラマは現在進行形なので、短編のイメージが膨らみ過ぎたため、長編で作り直すという展開になってくれると嬉しいのですが(笑)。
ちなみに、『ホルスの大冒険』に参加した主要メンバーというのは、以下の方々です。
『太陽の王子ホルスの大冒険』制作スタッフ
製作:大川博(大杉満)
脚本:深沢一夫
演出:高畑勲(坂場一久)
作画監督:大塚康生(下山克己)
美術:浦田又治
場面設計・美術設計:宮崎駿(神地航也)
原画:森康二(仲 努)、大田朱美(三村茜)、奥山玲子(奥原なつ)、菊池貞雄、小田部羊一、喜多真佐武、宮崎駿(神地航也)
大沢麻子さんのモデルとされる中村和子さんがいませんが、このときは既に虫プロに移籍していたので、東映動画にいませんでした。
『太陽の王子 ホルスの大冒険』Blu-ray 高畑勲が演出を務め、場面設計・原画に宮崎駿、作画監督に大塚康生といった当時の東映動画スタジオの精鋭スタッフが手掛けた長編アニメーション。 |